Kamesuke

フェイブルマンズのKamesukeのレビュー・感想・評価

フェイブルマンズ(2022年製作の映画)
4.3
スピルバーグが自身の幼少期から青年期までを描いた自伝的作品、、
と聞いたらもうその時点で最高に決まってるじゃないですか。
やっぱり別格ですよ。

5歳の頃、両親に連れられて『地上最大のショウ』を映画館で観てから映画という魔法≒呪いに憑りつかれたスピルバーグもといサミー少年が、両親との関係を軸にカメラを手にトラウマを克服していく物語。

『地上最大のショウ』の列車衝突シーンがスピルバーグの人生と後の映画史を大きく変えた出会いで、まさに『激突!』はこうして生まれたのか!という冒頭のワクワク感ったらない。監督の過去作のセルフオマージュの数々に加え、『ツイスター』などの非監督作も抑えてるのがなんとも憎い。

夫婦崩壊ものの傑作『ブルーバレンタイン』のミシェル・ウィリアムズに、これまた夫婦崩壊を描いた『ワイルドライフ』の監督脚本を務めたポール・ダノがフェイブルマン夫妻としてキャスティングされてるの、ほんとに完璧です。

「父親の不在」を繰り返しテーマとして撮ってきたスピルバーグだけど、
一見円満に見える複雑な家庭環境の中で彼の才能が開花したことも間違いなくあって理解が深まったし、悲痛な過去も自分だけが知っていた母親と父親の記憶を映画として残そうと決めた監督の胸中いかばかりか。
カメラを回すだけでありのままがフィルムに刻まれてしまうという、カメラを向ける側の暴力性・残酷性に自覚的でありながら、それら全部ひっくるめて映画を肯定するスピルバーグの覚悟と説得力よ。

特にプロムの上映会後の同級生とのシーンは凄かった。編集の魔力によって如何様にも印象を操作される「撮られる側」の感情の吐露には心がグチャグチャにされてとにかく刺さりまくった。

スピルバーグにとっての映画の神様ジョン・フォード役にあのデヴィッド・リンチ御大がキャスティングされてるけど、短い時間ながらすべてをかっさらっていくのがまた見事。
オチも最高にオシャレ!

現代の映画の神様がサミー・フェイブルマンとして自分自身と家族を見つめ直したお話、そりゃもう一見の価値ありです。
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