氷雨水葵

フェイブルマンズの氷雨水葵のレビュー・感想・評価

フェイブルマンズ(2022年製作の映画)
4.6
2023年31本目

映画って素晴らしい

◆あらすじ
初めて映画館を訪れて以来、映画に夢中になった少年サミー・フェイブルマン(ガブリエル・ラベル)。

いつしかサミーは8ミリカメラを手に、家族や友人の記録係となり短編ながらも作品を制作するようになる。

そして、さまざまな出来事がサミーの未来を大きく変えていく―――。

◆感想
スピルバーグ監督の自伝的映画をやっと鑑賞できました。サミー少年が映画館で観た映画に虜になったように、私もスピルバーグ監督作品の虜になったよ!『JAWS/ジョーズ』や『ジュラシック・パーク』を観たときの感動は今でも覚えているし、長編デビュー作『激突!』の衝撃たるや…。映画を好きになったきっかけは間違いなくスピルバーグ監督作品やなぁ。
作中での、列車と車の衝突シーンは誰が観ても迫力満点で印象的だけど、サミー少年にとっては自分で映画を撮るほどのものだったんだね。個人的には、プレゼントしてもらった列車の模型を走らせているシーンが印象的で、それを使ってあんな風に映画を撮ってしまうのだからサミー少年には間違いなく才があるのでしょう。この粗だらけの短編フィルムが、まさか『激突!』へ派生するとは(笑)どんなホラー映画よりも怖かったのを覚えています。

サミーにとって救いだったのは、家族みんなが協力的だったこと。学校ではいじめられ、母親の気持ちが別の人にあるという事実を知るけれど、なんだかんだサミーが映画を撮ることを応援していて、そこが観ていて救いでした。でも、家族のキャンプフィルムを編集しているときは泣きそうでした…。それを黙って母親に見せるサミー、さぞ辛かったろうな。と思うのと同時に、ガブリエル・ラベル演じるサミーを含め、ミシェル・ウィリアムズやポール・ダノ演じるキャラクターたちの心情を、繊細に描いていると感じられる瞬間がいくつもあって素晴らしい。本作は’’家族’’の物語であると同時に、夢追う1人の少年の物語であり、しかも’’映画’’を通してスピルバーグ監督を近くに感じられる作品でもあるんですよね。時にはSFを、時にはファンタジーを、時にはサスペンスを、と思っていたけれど、ここまで繊細にドラマチックに描かれたスピルバーグ映画はほかにないと思います。

本作を観れば誰しもが「スピルバーグ監督作品が常にそばにあった」「なんならそれらと共に生きてきた」と誰もが思うはず。それくらい作中のサミーと自分が重なると思います。

スピルバーグ監督が映画と出会い、さらに映画界へ入っていく姿も描かれており、でも序盤から中盤以降にかけて、ユダヤ人の両親を持つことにも触れられていて、スピルバーグのルーツを垣間見れます。幼少期~青年期に8ミリカメラで製作した短編をまとめて観たいですね。1本1本は短いけれど、その1本1本に途方もない価値があって、スピルバーグの才能が詰め込まれていると思うと、泣きそう…。

なんかもういろいろ書きたいことありすぎてダメなんですが、映画を愛する人にぜひ観てほしい作品です。

母親が言った「全ての出来事には意味がある」の一言にぐっときました。

アカデミー賞監督賞期待!!

TOHOシネマズにて鑑賞
氷雨水葵

氷雨水葵