ワンコ

銀河鉄道の父のワンコのレビュー・感想・評価

銀河鉄道の父(2023年製作の映画)
4.4
【雨ニモマケズ】

僕は、あの政次郎が机の端に見つけて目を通した「雨ニモマケズ…」の手帳のレプリカを持っている。

僕が手に入れた当時は限定販売で完売だったように思うが、花巻市がふるさと納税目的で、再び制作していると云う噂を聞いた。
本当だろうか…。

僕は、東北の出身で、田舎には学校の先生など宮沢賢治ファンは多かったように思う。

トシのことを詠った「あめゆきとてきてけんじゃ」の「永訣の朝」を先生が感情を込めて読み聞かせてくれた時、心が揺さぶられたのを覚えている。

賢治が、この映画「銀河鉄道の父」で描かれているような人物像だったと聞いたことはない。ただ、賢治が石に興味を持っていたのは確かなようだ。

岩手の北上地方は、他の東日本の地域とは違い、ユーラシアプレートと太平洋プレートの東西圧縮によって隆起した土地ではない。3000万年前くらいから徐々に大陸から切り離されて現在の場所にやって来た異なる地質の土地で、川などに転がっている岩石がバラエティにとんでいるのだ。あと、だから珍しく鉄鉱石がまとまって採れる土地でもある。新日鉄釜石が昔あったのはそのためだ。後々の弟清六の鉄関係のビジネスの出どころにも通じる。

また、賢治が農業指導に熱心だったことは、農学校卒の経歴からも確かだし、日蓮宗に傾倒していたことは、「雨ニモマケズ」の手帳にも、南妙法蓮華経とお題目が、ほかのお題目や念仏とともに記されていることからも分っている。南無阿弥陀仏の浄土真宗にはちょっとかわいそうな気もする。

ただ、トシの火葬の際にあのようなことになっていたと聞いたことはない。

ところで、岩手には盛岡と青森の三戸を結ぶ「いわて銀河鉄道」という第三セクターの路線があって、ちょっと笑ってしまうのだが、花巻とは全く関係のない場所を運行している。

ふるさと納税のレプリカ手帳(ほんとうか確かめていません)と銀河鉄道。
なんか賢治さまさまだ。

風の又三郎、あめゆき、セロ弾きのゴーシュ、雨ニモマケズ、ジョバンニ、カムパネルラ、山猫軒、誰もが知っている詩や物語だ。

賢治がいなければ、銀河鉄道999というアニメタイトルもなかっただろう。

この映画のような家族であったのであれば、短命だったが、賢治もトシも幸せであったと本人たちも思っていてくれると信じたい。

今、僕たちの世界に欠けているのは、雨ニモマケズのような人々の気持ちなのではないかと思う。

森七菜さんも、最後に存在感を見せた坂井真紀さんも良い役を素敵に演じていたように思う。最後の母親としてのセリフ。みんな泣いてた。
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