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私たちの場所のbabyのレビュー・感想・評価

私たちの場所(2022年製作の映画)
4.2
私にとって多方面から心動かされた大切な作品になった。正直なところ今回で一番期待していたわけでもなく、インド映画が大好きなわけでもない。だけど心がグッと持っていかれたのはあまりにも予想外の出来事で驚いた。今までで一番好きなインド映画。
"多方面"と書いた理由は、この作品自体はもちろん、描き方や制作の仕方、インドの街の切り取り方、監督という一人歩きの名を持たない作り手の意思。全てに心動かされたから。

2人のトランスジェンダーの物語ということで、インドの現状を映し出すわけだけど、この現状はあまりにも冷酷で驚いた。でも、この冷酷さに溺れないぐらいの彼女達のパワフルさがあった。Q&Aでも声が上がったシーン。私も大好きなシーン。
運転手にまっすぐいらないと答えて、笑顔で帰るその後ろ姿はとんでもなく美しかったし、忘れられない姿だった。
質問してくださった人がとてもいいことを質問していて、このシーンはどうやってできたのかという質問。
制作集団みんなとして、実体験のエッセンスはあるが希望や願いが込められているとのことで、本当に素敵なシーンだったなと。慎ましく、強い。そんな姿は私が思い描く素敵な女性像そのままだった。

"エクタラコレクティブ"という
制作集団で作っているそうだが、1人でなく皆んなでヴィジョンを描き、カンバセーションすることによって生まれるこの作品は例え彼らの姿が見えなくとも、意志が作品に乗ってしっかり伝わる。映画を作る上で伝え方だけでなく、制作する上での示し方まで提示してくれる彼らは素晴らしい。

映画を観る上で、ここまでちゃんと示してくれたら私たち観客側もしっかりと作品と向き合わなければならないと強く感じた上映、Q&Aでした。
これぞ映画祭の醍醐味!
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