このレビューはネタバレを含みます
我がカルトマスター・デヴィッドクローネンバーグ監督渾身の中途半端な一作。軽い。底が浅い。監督独特のアングラ感も薄れた。劣化版ヴィデオドロームになってしまった。
としても私はクローネンバーグに洗脳されている変態なので十分に満足して何度も本作を観返してしまう。
有機物と無機物の混合割合は相変わらず冴えている。あえてサイバーパンクにしないのだろう。ゲームの世界観からいつでも戻ってこれるような形で二重構造にしているのはさすが。虚構の作り方自体は間違っていない。
あと少しで手の届く「電脳な世界」「近未来な世界」「クーロンズゲートな世界」を切り捨て、「閉ざされた世界(あの部屋の中にしか人はいない)」にのみ活路を見いだすということでラストのどんでん返しにつなげたいのだろう。でもどんでん返しに頼ろうとしている段階ですでに中途半端だったのかなと思う。いつものクローネンバーグ映画ならラストはどうであろうがイカれ具合やペーソスの方が大事なので。
あなたがジュードロウファンというだけでこのタイトルを手に取って観てしまったのであればどんな感想なのだろう。もし奇跡が起きて、ジュードロウの美しさだけがお目当てだったあなたがクローネンバーグ監督の魅力に少しでも気づいたなんてことがあれば、私は心から嬉しい。
クローネンバーグ監督入門作品としてはひょっとしたらちょうどいいのかもしれない。
ちなみにクローネンバーグ作品の中では本作は決してグロい方ではない。