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セカンド・チャンスのbabyのレビュー・感想・評価

セカンド・チャンス(2022年製作の映画)
3.8
素直に作品として面白かった。
映画祭でのドキュメンタリーは正直個人的に期待度大で、今までのカーマインストリートギターとかリトルガールとかドキュメントのジャンルでも完成度高くていい作品多かったので即チケット取った。
その想像をいい意味で超えてきたのがよかった。予告を見てかなりキャッチーでコミカルな作風で面白そう!なんて軽い気持ちで見たけど、それは色んな意味で裏切られました。
序盤。デイビスのふざけたユーモア満載の人柄やコミカルさに会場も笑い声でいっぱいで、作品自体も同じようにコミカルに表現されてた。でも、同時に彼の暗い部分がフォーカスされて彼自身が何のために動いているのかが次々と暴かれる。隠蔽や彼の価値観に疑問が生まれ始めて、彼の欲望や情熱は決して善とはいえない方向での行動だったと知る。それでも少しややこしいのは彼の功績。彼は結果として人の命を救っていたのも事実。だが"人を助け続けたい"というよりもビジネス色も強く"自分は助かればいい"銃社会である事すらも肯定的な人だった。彼に陰陽があるように、彼の周りの人達も陰陽がある。でも彼とは少し違い陰陽がある上でどうやって道を選択するかを考えられている人達だった。隣接するのに対照的な考えが、風刺が効いていて重くなりすぎずコミカルに仕上がる。でも最後の感動的なシーンだって、デイビスがいなければこんなことにもなっていないし、、、ありふれた日常やきっと何も起こらないのが幸せだけど、悔しいことや残酷が起こす負のエネルギーに打ち勝った時の感動的な瞬間だってある。だからって肯定できることではなくとも、むやみやたらに否定もできないのが何だか悔しい。
ドキュメンタリーのすごいところって制作側は俯瞰して見なきゃいけないというか、入り込みすぎてはいけない。だからこそ映せるってすごいと思う。改めてドキュメンタリーというジャンルも好きになった。

この作品は全体的にリチャードデイビスの極めて優れたユーモアで作品全体を包みつつも、そのユーモアで本人を皮肉る感じがすごく作品として面白いと思った。Q&Aでも言っていた通り、非常にアメリカらしい出来事と、アメリカらしい作品。人生の陰陽については終わった後、考えざるを得なかった。
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