安堵霊タラコフスキー

イタリア旅行の安堵霊タラコフスキーのレビュー・感想・評価

イタリア旅行(1953年製作の映画)
4.8
ロッセリーニも結構作品毎に出来が激しい監督の一人だけど、ゴダールが影響を受けただけあってこの作品はヌーヴェルヴァーグの先駆け然とした傑作となっている。

イングリット・バーグマンとジョージ・サンダースが夫婦を演じてて英語を話さないという不思議さは気になったけど、倦怠期に突入した夫婦の描写を軸に展開する様子には良い意味でドラマ性が感じられず、こういう描写の連続で展開していく映画っていうのはロメールやホン・サンスの作品がそうであるように情緒的で説明的な面が一切無いのが素晴らしい。

車から見える風景がどれも生活感溢れるもので実に眩しいのもまた素晴らしく、やはりロッセリーニはネオレアリズモの先駆者だけに人間が自然に映る場面作りに秀でているなと改めて感じた。

ロッセリーニの一番エポックメイキングな代表作は間違いなく無防備都市だろうが、この作品もヌーヴェルヴァーグの前身として時代の先を行っていた、映画史において実に重要な傑作だろう。

ところで中盤イングリット・バーグマンが彫刻群を眺めるシーンには後の君の名前で僕を呼んでに通じる要素があったように思えたが、傑作にはこういう後の作品に繋がっているであろう描写が多いから発見の為に度々見る必要があるなとつくづく思う。