みんと

イタリア旅行のみんとのレビュー・感想・評価

イタリア旅行(1953年製作の映画)
3.7
ヌーヴェル・ヴァーグの先駆けとも言われる今作品は倦怠期の夫婦の陥るなんて事ない物語。

盛り上がりも無ければメッセージ性がある訳でもなく、けれど普遍的なテーマがとても生々しく描かれ心に刺さる作品だった。

ドキドキするトキメキなんてすっかり無くした結婚8年目の夫婦。子供も居ない夫婦が頭の何処かに「離婚」も意識しながらイタリアの地に滞在する事に、、、

妻を演じるのはイングリッド・バーグマン。知性漂う美しさが逆にトゲトゲした冷たさに感じるくらい二人の間の空気は冷えきってる。

ともあれ間違いなくストーリーを注視する作品ではなく終始目が行くのは映像の素晴らしさ。ベズビオ火山、ポンペイの遺跡、カプリ島、博物館など名所をめぐる中で古代美術の迫力には圧倒されっぱなし。また車窓に映るイタリアの人々の日常でさえも美しく、映画の中である事を忘れるくらい見入ってしまった。(勝手に模擬イタリア旅行してる気分)

やがて素晴らしい風光や、古代美術や遺跡など歴史の重みに触れた夫婦は、敬虔な祈りの行列の中に失った愛情を見いだす事になるのだけれど、そこはちょっと強引さが否めないところ。ただ、これもまた美しい名シーンとも言える。

鑑賞後、バーグマンとの結婚生活が破局を迎えようとしていたロッセリーニ監督の願望が込められた作品と知り、なんだか後味が複雑な作品でもあった。
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