アー君

REVOLUTION+1のアー君のレビュー・感想・評価

REVOLUTION+1(2022年製作の映画)
3.0
平日なので満席ではなかったが、意外と若い人が多かったという印象だった。

構成や演出には確かに粗いところはあったが、短期間でスピーディーに制作したのであればよくまとめていたと思う。また上映時間も75分よりも長く感じて2時間ぐらいの感覚であり映像体験として濃密だった。

フィクションでありながらノンフィクションの要素を脚色して川上の心象風景は映像としては面白いのだが、犯行前後にあのようなヴィジョンがみえるというのは少なからず微妙であり、SNSを読む限りでは彼はニヒリストであり、この世界を虚無的にみている印象があったとは思う。

気になったところといえばブルーハーツの曲を使用していたが、バンド内に新興宗教に入信しているメンバーがいて、ファンを勧誘していた事実を知っていた上で使ったのだろうか。あえてアイロニーとして使用したシーンであれば理解はできるのだが。

容疑者の半生をみれば同情はするし、カルト(もしくは集団組織)のもつ危険性には十二分に理解をしているが、あのような行動は短絡的で家庭の問題を弁解にした凶行であり、決して賛同する事はできない。
予兆として職場では独自の方法で融通が効かない不安定な面がみられ、度々トラブルを起こしていたことを映画でも述べていたが、あれだけ精密に銃器を作るスキルがあるならば、ルサンチマンにならずとも他の解決策があったのではないかと思うと残念でならない。

昭和時代の政治事件として農本主義を理想とした五・一五事件、仏教神秘主義が背景といわれている血盟団事件、二・二六事件などがあったが、今回は無思想で組織ではなく山上の内面のみに自己完結された逆テロであるというところに制作側はシンパシーを感じて映画を作ったのだろうか。タイトルの+1(プラスワン)は何を指しているのかは漠然だが理解している。

しかし今回の事件は直接的ではなく、元宰相の暗殺自体は宗教団体に対しては間接的であり、テロルのソロル(姉妹)編である。それゆえに世間からは同情を禁じ得ない大衆心理が生まれた稀にみる政治事件として考察している。

[ユーロスペース 19:00〜]
アー君

アー君