ブタブタ

情無用のジャンゴのブタブタのレビュー・感想・評価

情無用のジャンゴ(1966年製作の映画)
4.5
「シュルレアリスム・マカロニ・ウェスタン」
「マカロニ・ウェスタンの極北」
等と形容され、ホドロフスキー『エル・トポ』やジム・ジャームッシュ『デッドマン』にも多大なる影響を与えた作品らしい。

ウィリアム・S・バロウズの前衛ウェスタン小説『デッドロード』は主人公キム・カーソンズの死亡記事で始まり、キムをリーダーとする超人的な銃使い集団「ジョンソン・ファミリー」と大マフィアの殺し屋達の戦い、クトゥルフ宇宙、ゲイセックスに残酷描写と『情無用のジャンゴ』を見て何か共通のモノが感じたのですが、激しいカットバックやサブリミナル効果みたいな細かいカットの挿入は、ベルトリッチ監督作品を多く手掛けたエンリコ・アルマッチ編集によるもので、この実験的映像により本作を既存のマカロニ・ウェスタンとは一線を画すモノにしてるのですが、バロウズのカットアップ・フォールドインの実験的文学手法はそもそも映像のコラージュやモンタージュ等の実験的映像の手法を文学に取り入れたもので、これがまるで『情無用のジャンゴ』はバロウズの実験小説(の手法)を逆輸入して映画化みたいでホドロフスキーの『エル・トポ』や実現しなかった前衛西部劇『AvelCain』、西部劇と実験映画のミクスチャーのオリジナルとも言えるのがこの『情無用のジャンゴ』なのではと思いました。

前衛カルト西部劇。
冒頭、ゾンビの様に地中から這い出して来る主人公〝名無し〟

彼は強盗団一味で金塊強奪に成功するもメキシコとの混血を理由に同じく有色人種のメンバーと共に白人達の裏切りにあい殺されて埋められる。
インディアンに助けられインディオの秘術により復活した〝名無し〟はデッドマンとなり復讐を開始する。
ジャームッシュの『デッドマン』はほぼ本作のリメイクと言うかストーリー
も可也共通してる。
インディアンが生きたまま頭皮をナイフで剥がされるシーンはその構図もまんま『アンダルシアの犬』
奪った金塊を鋳造して作った「金の弾丸」はまさにマジカルアイテムで西部劇なのに主人公のガンアクションが極めて少なく此処ぞと言うシーンでしかこの金の弾丸を使わないのも普通の西部劇ではない異様な作品たらしめていると思います。

真っ白な砂漠に雲一つないスカイブルーの空は書割やCGの様。
〝名無し〟は人妻と関係を持ったりしますがこの辺の描写は非常におざなりで、寧ろ金塊を巡る争いで人質にされる美少年がヒロインの役割を果たしてます。
悪の支配下にある「地獄の街」が後半の舞台になるのですが、
街を牛耳る実力者ソロは三島由紀夫先生の「楯の会」みたいな揃いの黒い帽子黒いシャツの制服を着た一種のホモソーシャル集団「コウモリ団」を率いていて、この若者・ゴロツキ集団と〝名無し〟の戦いがクライマックスになるのですがコウモリ団に美少年が犯されたりする濃厚なゲイテイストやホモソーシャル集団等は同じくバロウズの小説『ワイルドボーイズ』にもゲイのカルト集団が登場しコレも又非常にバロウズ的です。

アレックス・コックスが本作のリメイクを熱望するも実現しなかったとか。
アレックス・コックスがバロウズの小説『デッドロード』を映画化したら本作を超える前衛実験西部劇になるのでは等とまた妄想するのでした。
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