みおこし

ホワイト・ドッグのみおこしのレビュー・感想・評価

ホワイト・ドッグ(1981年製作の映画)
3.7
最近観た映画の中では特にシビアな内容の一本でした。サミュエル・フラー監督作。

帰宅途中、うっかり白い犬を車で轢いてしまった新進女優ジュリー。すぐ動物病院に連れて行った為、一命を取り留めたその犬を飼い始めるが、ひょんなことからその犬が特定の人間に対して敵意をむき出しにする習性があることに気づく。実はこの犬は
黒人だけを襲うように調教された攻撃犬だった...。

本当に悲しいテーマです。犬には何の罪もないし、襲われる人にも当然罪はない。この犬を調教した"見えない存在"が、諸悪の根源だなと...。そして、この見えない存在は、今の私たちの世の中にも数多く存在しうると思うとゾッとします。
第二次世界大戦中、各国で様々なプロパガンダ映画が制作され、その国のポリシーを完全なる"正"として国民の戦意を高揚させたり、敵をより憎むように仕掛けたりする扇動施策が展開されましたが、何だか本作を観たらそのことを思い出しました。間違った価値観や知識を強者が弱者に教え込むことほど、恐ろしいものは無いですね...。過去の悲しい歴史の中で、特定の人種のことを差別するような考え方が植えつけられ、こんな風に人間以外にもその影響が及ぶなんて怖すぎます。
勉強不足で恐縮なのですが、このような攻撃犬は本当に実在していたのでしょうか。ネットで調べてもすぐに出てこず、もしご存知の方がいらしたら教えてください!

決して諦めない調教師キーズを演じたポール・ウィンフィールドの目で語る演技も最高だったし、ベテラン俳優&歌手のバール・アイヴズの存在感も抜群。
ラストシーンを通して我々に訴えかけられるメッセージも強烈過ぎて、観終わった後もしばらく余韻が残る映画でした。
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