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高速道路家族のrage30のネタバレレビュー・内容・結末

高速道路家族(2022年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

サービスエリアを転々としながら生きる、4人家族の話。

主人公一家は、サービスエリアで行き交う人々に小額を借りて生活をしているのですが、この設定が面白かったですね。
子供も使って、財布を失くした父親を演じれば、相手の警戒心も緩むし、小額なら騙されても痛くない。
更には、ほとんどの相手が一期一会の関係なので、同じ事を繰り返してもバレ難いという利点もある。
サービスエリアの中なら食には困らないし、警備に目を付けられたら、別のサービスエリアに移動すればいいわけで。 
こういう人が本当にいても、おかしくないな…というリアリティーを感じられて、よく出来た設定だったと思います。

犯罪をしながら生活する家族…という意味では『万引き家族』を想起させますが、そこまで社会派な感じもしないし、前半に関しては、明るくコミカルな描写も多いので、意外と気楽に見れる事でしょう。
そして、後半になると、父親が警察に捕まり、残された母子とリサイクル店店主の交流と、父親の過去が明らかにされます。
母子と店主の交流に関しては、店主側の事情もしっかり描かれるので、特に違和感もなく、ベタなヒューマンドラマとして見れました。
店主の店がリサイクル店というのも、何だか示唆的でしたね。

父親の過去に関しては、彼が詐欺に遭った事が明かされるわけですが、彼自身も騙されていたとはいえ、自分の加害責任から逃れるのは理解出来ないし、増してや、家族を巻き込んで路上生活させるのは言語道断でしょう。
正直、父親の自己責任としか思えないのですが、そのせいで、社会的な問題提起が見え難くなっているのは、ちょっと残念だったかなと。
まぁ、家父長制の呪いを描いている…とも言えなくもないけど、家父長制以前に単に心を病んでいるだけの様にも見えましたし。

ラストは予想外の展開で驚かされましたが、結局、娘の新生活は幻で、両親共に焼死したという事でしょうか?
ショッキングはショッキングとはいえ、ここまでショッキングにする必要があったのかは疑問が残るところ。
前述した様に、社会問題と言うより、父親の自己責任に因るところが大きいので、彼らの悲劇が義憤にまでは昇華されず、ただひたすらに胸糞な気持ちにさせられました。
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