雷電五郎

ヘルホール ー悪霊館ーの雷電五郎のレビュー・感想・評価

ヘルホール ー悪霊館ー(2022年製作の映画)
3.6
行方不明になった8人の女性の消息を求め、素性を隠してとある修道院の潜入捜査をすることになったマレク。しかし、修道院を探るうちにおぞましい真実を目の当たりにする。
というあらすじのポーランドのホラー映画です。

まず、雰囲気がとにかく最高で勢いや緩急差で怖がらせるホラー映画にない独特の陰鬱な空気感がたまらなかったです。
終始不穏な音楽が流れ、淡々と捜査を続けるマレクの体に徐々に現れる奇妙な変調もあいまってゾクリとするような寒気に浸れる作品でした。

冒頭の乳児がマレクであることは早々に明かされつつも、彼の体の変化が一体何を示すのか明かされるのは後半になってから。
悪魔崇拝は度々悪役の設定として用いられるものではありますが、目的のためにただ淡々と犠牲者を出しながら罪悪感のかけらもない落ち着いた態度から狂気の深度が窺えるのが非常に好きです。

後半の儀式に失敗した、かも?となるシーンはちょっと笑いました。まぁ、1000年前の本に書かれた儀式なんて検証のしようがないですもんね(笑)

ラスト、世界の理が反転したことを示すように空が砕けて汚泥が噴き上がるシーンは美しくもおぞましくてたまりませんでした。祭壇の花が咲き、枯れた大木が緑を取り戻す、ある意味で悪魔の生誕を祝うような描写とキリスト像と見つめ合う悪魔の構図に、両者の切っても切れない因縁を感じるのもすごく好きでした。

最後まで暗くてどことなく陰鬱な雰囲気が漂っていて個人的にはとても好きな部類のホラー映画でした。怖いというりゾワゾワとする薄寒さを感じるのがまたたまらなかったです。
こういうホラー映画もっと観たいですね。最後のオチまで好きでした。

小物やロケーションも話とマッチしていてよかったです。
ただ邦題の「悪霊館」はちょっと蛇足だったかなと…死霊館シリーズに似たタイトルをつけなくても、こちらの作品単体でよかった分勿体ないなと思いました。
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