タイレンジャー

薔薇の名前のタイレンジャーのレビュー・感想・評価

薔薇の名前(1986年製作の映画)
3.5
まずは何といっても、修道士見習いのアドソ君(クリスチャン・スレイター)の童貞卒業エピソードが強烈です。

聡明な修道士ウィリアム(ショーン・コネリー)に同行して要塞のように異様な佇まいのカトリック修道院を訪れたアドソ君。いつも口がポカーンと開いていて頼りなさげな様子が可愛い10代後半と思しき少年です。

修道院内で不可解な連続殺人事件が発生し、アドソ君はウィリアムと共に捜査に乗り出します。

しかし、アドソ君は捜査のさなか、ぼろ雑巾のような服をまとい残飯をあさる美少女に一目惚れ。両者ともに言葉は交わさずとも視線が濃厚に絡み合います。すっかり心を持っていかれ、ウィリアムの話(本筋である殺人事件)が頭に入ってこない様子のアドソ君。

この要塞修道院はすっかり腐敗しきっており、下界の一般市民は修道院から落とされる残飯にすがる有様であった(『マッドマックス 怒りのデスロード』っぽい)、と。

そしてその美少女も食料と引き換えに夜な夜な修道士たちに身体を売っていた事実が明らかになります。

偶然にもその場に紛れ込んでしまったアドソ君。薄汚れた美少女と再会を果たしますが、秒速で押し倒され、言葉を交わすこともなく情欲に身を任せた二人は燃え上がります。

ロクに風呂に入ってなさそうな美少女の風貌(やはり臭そうではある)は気になるものの、童貞にとっては願ってもない奇跡の展開ですよ、これは。

名も知らぬ少女と身体を重ねたことで頭の中を支配されてしまったアドソ君は師であるウィリアムに懺悔をします。何でもお見通しのウィリアムは「お前は愛と情欲を混同しているのだ」と。

10代のオトコにとって初体験は最重要課題です。その余韻にうなされるアドソ君にとっては信仰も、殺人事件(話の本筋)も100%どうだっていい状況のはず。

だから、アドソ君目線で本作を観たオトコも同様に「殺人事件なんかより美少女の話を!」となりますわな、当然。

で、本作はその点にもちゃんと目配せができていて、この少女がちゃんと殺人事件に絡んでくるんですな。あろうことか、少女に殺人の容疑がかけられてしまい、火あぶりの刑に処されることが早々に決まってしまいます(!!)。

初恋にして初体験で燃え上がった相手が火あぶりで燃え上がってしまうなんてシャレにならん、ですよ。これはエグイ展開。なのでアドソ君も全力で事件解決に挑む、というわけですね。本当によくできた話だと思います。

すっごく単純かつ下世話な目線で観れば、これだけでも十分に面白い映画です。