桃子

薔薇の名前の桃子のレビュー・感想・評価

薔薇の名前(1986年製作の映画)
4.9
「中世修道院ミステリー」

14世紀のイタリアの修道院が舞台というだけでわくわくしてしまうのに、ジャンルはミステリー!大好物すぎる映画である。中世ミステリーなんて激レアで、めったにお目にかかれない。ずいぶん昔に1度見たことがあるのだけれど、なぜか急にまた見たくなった。アマプラでは見放題に入っていなかったので、別の配信サイトで鑑賞。見られて良かった~~!!
原作はウンベルト・エーコの同名小説である。バスカヴィルのフランシスコ会修道士ウィリアムが、ベネディクト会の見習修道士のアドソと共に、重要な宗教議論を開催するため設置された修道院での連続殺人を調査するという歴史ミステリー。エーコの蔵書は5万冊に及んでいたそうだ。探究心が旺盛で知識も豊富な文筆家だったのだろう。
二人組で謎を解くというところや、「バスカヴィル」という名称で、シャーロック・ホームズを連想した。ウィリアムはショーン・コネリー、アドソはクリスチャン・スレーターが演じている。コネリーは存命しているが(御年89歳)、残念なことに2006年に引退している。スレーターは撮影当時17歳だったが、子役からキャリアをスタートさせていたようだ。私は全く知らなかったのだけれど、拳銃不法所持、飲酒運転、薬物摂取や暴力行為などのトラブルが多く、ハリウッドを代表するお騒がせ俳優の1人だという。あのアドソがそんな残念な大人になっていたとは… 1度でも実際に修道院で修業すればいいのに(笑)
冗談はともかく、中世の修道院がこれでもかと出てくる映像に感激しっぱなしだった。いったいどこの修道院でロケをしたのかと思ったら、北イタリアの山地に実際に巨大な修道院と文書館の建物を建造したそうだ。といっても、パネルだけで実際の建築物ではなく、建物の中はドイツにある使われなくなっていた修道院を改修して撮影したという。さらに、迷宮図書館はチネチッタ撮影所内部に作られたセットだそうである。ハリー・ポッターに出てくるような階段がとても印象的だった。
舞台となる中世修道院での生活や道具、慣習などを忠実に再現するため、衣服から小道具に至るまで詳細に復元を行ったとのこと。コスプレ映画を見る醍醐味は、こういうところにある。小道具のひとつひとつまでこだわっているのがわかると、嬉しくなってしまう。
ストーリーはただただ面白い。原作を読んでいなのだが、おそらくもっと長いのだと思う。2時間12分という長さにまとめるのはなかなか大変だったのではないだろうか。いつか原作を読んでみたいものだ。ただ、今現在「断捨離」の最中なので、本を買うのは躊躇する。kindle版を探したけれれどなかったので残念だ。
ミステリーなので、未見の人のためにネタバレできないのが辛い。中世のカトリック修道院でしか起こりえない殺人事件と言えるのだけれど、そもそもキリスト教では「汝殺すべからず」と教えているはずなのに殺してしまうという矛盾もあるにはある。でもまあ、そこはフィクションでありエンターテイメントだから突っ込まないでおくのがいいだろう。
修道院のお話なので、男性しか登場しないのかと思いきやさにあらず。アドソが大胆な行動をしていた。スレーターの体当たり演技というのか何と言うのか、目のやり場に困ってしまった。原作にあるからそうしたのだろうけど(マイナス0.1ポイントはこの部分です)。
近々、NHKのBS4でドラマ版を放映(再放送のようだけれど)するようだ。私は見られないので残念無念。見られる方は是非見てください。感想も聞きたいなあ。
桃子

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