ほーりー

イヴの総てのほーりーのレビュー・感想・評価

イヴの総て(1950年製作の映画)
4.0
「イヴの総て」を観ると、ホントひとの悪口の勉強になりますわな(;^ω^)
というぐらい本作の登場人物はシニカルで、毒を吐く人ばかり。

あの「サンセット大通り」を破って1950年のアカデミー作品賞を獲得した名作だけど、個人的には「サンセット大通り」派です。
ちなみに文豪・谷崎潤一郎も淀川センセのインタビューで「サンセット大通り」の方が好きだと答えてました。

これも説明するのも野暮になるぐらいの有名作で、マリリン・モンローが端役として出演していることでも知られる作品。

監督&脚本はビリー・ワイルダーのライバルといっていいジョセフ・L・マンキーウィッツ。

野心あふれる女優イヴが周囲の人々を踏み台にしながらスターダムを駆け上がる姿を通し、華かな世界って実はこんなもんよとシニカルに描いている。

サラ・シドンズ賞という、あんなアカデミー賞のような俗物ではない本当に権威ある(というフレコミの)賞を史上最年少で獲得したイヴ・ハリントン(アン・バクスター)。

拍手喝采の中、受賞の模様を冷めた目で見ていた連中がいた。

大女優のマーゴ・チャニング(ベティ・デイヴィス)筆頭に、悪辣な批評家のアディスン(ジョージ・サンダース)、演出家、劇作家とその妻といった人々である。

ほんの数ヶ月前は女優ですらなかったイヴ・ハリントンが何故これだけスピード出世したのか? 彼らのそれぞれの回想からイヴの総てが明かされる。

ワイルダーもそうだが(同年の「サンセット大通り」も然り)マンキーウィッツも回想形式の好きな人で、本作や「裸足の伯爵夫人」でも回想シーンからはじまる。

ただ一人の人間が回想するのではなく、複数の人間がリレー形式で回想して描かれるというのが面白いと思った。

その回想で明かされるのはイヴのあまりにも破廉恥な行為で、本当にアン・バクスターが憎たらしく見える。

ベティ・デイヴィスは一見性格が悪そうな女性に見えるのだが徐々に女性らしい可愛らしさが明かされ、こちらは徐々に醜い本性を現したイヴと対比して描かれている。

あと批評家役のジョージ・サンダースは本作で唯一人オスカーの演技賞を受賞しただけあってひときわ印象が強い。

サンダースは私生活も本作の役柄と同じような皮肉屋として有名で、72年に自ら命を絶つのだがその時の遺書が「退屈だからこの世を去る」というお人。

そして本作の凄まじさはラストシーン。最後のショットに映るのはベティ・デイヴィスでもなければアン・バクスターでもなく、ラスト数分前に登場した人物という点がこれまた痛烈な皮肉である。

ちなみに本作の衣装でオスカーを受賞したデザイナーのイーディス・ヘッドはのちに「刑事コロンボ」の一編「偶像のレクイエム」でご本人役で出演しているのだが、そのエピソードで犯人であるかつての大女優を演じたのは誰あろうアン・バクスターその人である。

あ、あとショービジネスの内幕ものだけあって、タイロン・パワーやグレゴリー・ペックという実名が出てくるのだが、いずれも本作を製作した20世紀フォックス社のスターなのがチャッカリしてますな、ザナックさん。

■映画 DATA==========================
監督:ジョセフ・L・マンキーウィッツ
脚本:ジョセフ・L・マンキーウィッツ
製作:ダリル・F・ザナック
音楽:アルフレッド・ニューマン
撮影:ミルトン・クラスナー
公開:1950年10月13日(米)/1951年9月21日(日)
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