テリー・ギリアムなので、ある程度の奇想天外さは予想した上で鑑賞。
やはり独自のアクがあって、左脳で追いかけるとわけわからないw
でも、まるでダリの絵画の中に潜り込んだような感覚で結構楽しめた。
1000歳以上というパルナサス博士は、心の中に抱く世界を具現化した鏡の中に誘う見世物で人気を博している。
かつてパルナサスと賭けをして負け、彼に不死の命を与えた悪魔ニックはこれが面白くなく、魔術を妨害するために彼の娘を誘惑すべく、若者トニーを送り込む・・
一応舞台は現代のロンドンなのだけど、舞台といい移動トレーラーといい、パルナサス一座の周辺はクラシカルでメルヘンチックでちょっとデカダンな雰囲気。個人的にその腐敗のムードがツボ。
さらに鏡の中に入ったら完全にファンタジー。
入った者の心の欲望の世界なので、好き放題シュールでもありw
夢のような幻想世界にいきなり悪魔ニックの顔(首)ドーンは笑えた。
そんな異次元のギリアムアートに加えて、見どころはキャスト。
パルナサス役にクリストファー・プラマー、悪魔ニック役にトム・ウェイツ。
そしてなんといっても本作撮影中に急逝してしまったトニー役のヒース・レジャー。
さらにヒースの友人だったジョニー・デップ、ジュード・ロウ、コリン・ファレルがトニー役を引き継いでいて、豪華4人で1役という稀有すぎるパターン。
現実世界でのシーンはヒースで撮り終えていて、鏡のシーンになるたびにジョニーになったりジュードになったり、コリンになったり…という涙ぐましいアレンジ。
まぁ鏡の中は人の空想の世界なわけだから、トニーのルックスも微妙に変わりうるという、ちょっとしたこじつけ?wも通用するし、実際違和感はなかった。
それぞれヒースとのパーソナルな友情も大いに感じられてグッときた。
現実と虚構の世界を行き来してるうちに、欲を満たすことの価値があやふやに。
真実からは嘘を 嘘からは真実を
何が善で何が悪なのか?どうなったら自分は幸せを感じるのか?
描写のディテールの意味はしっかり掴めずとも、そんな虚しさは確かに。
(といってラスト、現実世界での落とし所は安全パイ過ぎる気もしないではないけど)
ただただ荒唐無稽なファンタスティックアートに見えて、案外メッセージ性もあって骨太なのかも。