ぴよさん

Dr.パルナサスの鏡のぴよさんのネタバレレビュー・内容・結末

Dr.パルナサスの鏡(2009年製作の映画)
4.4

このレビューはネタバレを含みます

テリー・ギリアム節満載で鏡を開けた瞬間のわくわくと現実の絶望のギャップに胃がキリキリする、楽しい

ヒース・レジャーを筆頭に集まったトニーたち、個人的にコリン・ファレルの持つ'らしさ'が出過ぎててよかった トニーの持つ多面性が幸か不幸かあんなかたちで表現されてしまっている、これは本作ならではの表現方法だし、他では絶対に無理だ

表面上はギャンブルに嵌って抜け出せなくなった父親が勝手に救われる話だと思っているけれど、'ゼロの未来'でも仮想世界に嵌った話だったし、テリー・ギリアムは父親や閉塞感のある空間に何某かの思いがあるのかもしれない
そう考えると、'ラスベガスをやっつけろ'は大分リアリスティックな話というか、車が走っているのが殆どなのもあり地に足がついた印象がある トビーマグワイアがそれに出ていて、今作にアンドリューが出てるのはなんらかの奇跡だな
話を戻すと、父のエゴで娘の生涯を悪魔に売り渡したわけだけれど、その顛末は見るに堪えないもので、かつて足蹴にしていたパーシーから詰られ、娘にも会えず、なんともみすぼらしく立場が逆転して終わる最後は、皮肉な形でまさしくパルナサスの鏡と言えてしまう内容でした

ナイトメア・アリーにも似たこのキャラクターは、そういった悲劇の結末を迎えてしまったとしてもある種当たり前と思えてしまう それはわたしが頭のどこかで'人にしたことは必ず自分に返ってくる'という半ば迷信にも似たことを信じているからなのかもしれない

Hanged manは最後も偽のパイプを掴まされ吊るされて終わるし、初めから終わりまでステージの中心で胡座をかいているだけの博士に羨む未来なんて来ない
トム・ウェイツ扮する悪魔だって、名前に悪い人物のような印象を一旦は受けるけれど悪魔の囁きに過去の失敗も省みず快諾してしまう博士に原因がある 何かのせいにしたいだけなんだ

これはそんな当たり前を、ファンタジーというオブラートに包んだ壮大な物語
'現実は小説より奇なり'という言葉があるが、それが鏡写しになった時はたしてどう見えるのか そんなことをまざまざと見せつけられている

他作品のテリー・ギリアムの頭の中をはやく覗いてみたい
ぴよさん

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