くう

零落のくうのレビュー・感想・評価

零落(2023年製作の映画)
3.5
趣里さん、伊藤 蘭さんによく似ているって、今回初めて思った。

出だしは何かのPVのように見せたいシーンだけが細切れになっているように感じたけれど、話にグイグイ引き込まれて、ラストは鳥肌。

何かの頂点を目指す人は孤独、という以上に、この男は勝手に孤独なんだなって思った。

しかし、個人的には主人公よりも、あの〇〇の方がずっと〇〇〇〇に感じられた。全ての悪運を背負って来るような悪魔的破綻人格。主人公の方が気の毒に思えてしまった。


斎藤工さんがいい感じに気持ち悪くて、そして可哀想。

他のユーザーの感想・評価

komagire23

komagire23の感想・評価

1.5

このレビューはネタバレを含みます

(完全ネタバレですので、必ず鑑賞後にお読み下さい)

映画の中で主人公の漫画(作品)が明確に示されないのがこの映画の致命的欠点なのでは?

※原作は未読です

期待して見たのですが、個人的にはダメな作品になってしまいました。

その要因は以下3点だったと思われます。

ダメな要因の1点目は、主人公の深澤薫(斎藤工さん)がどのような表現の漫画を理想として描いていたのかがほとんど示されない点だと思われました。

主人公の深澤薫は、かつては人気があり売れていましたが、最近はその人気に限りが出てきた漫画家とこの映画で描かれています。
そして深澤薫は、流行を追ったり売れることを求める(売れている)漫画を毛嫌いしています。

しかし、では深澤薫が表現したい作品(漫画)はどのようなものだったのか?
それが示されないまま映画は進行するので、深澤薫の主張(≒映画)の中身が空洞のままこの映画はラストまで進んでしまったと思われました。

ダメな要因の2点目は、では主人公の深澤薫が否定していた、流行や売れている(だけ?)の作品は具体的にどのようなものなのか、それもほぼ示されていないところです。

流行や売れている(だけ?)の作品は、深澤薫の長年のアシスタントだった冨田奈央(山下リオさん)が描いた漫画によって、深澤薫がその作品を読む場面で少しだけ示されます。

しかし、その編集者が求めるプロットに従った(流行や売れることを求めた)冨田奈央の漫画も、深澤薫は読んだ時に褒めていますし、その漫画を通して流行や売れることを求めた作品とは何なのかまでは、明確には観客には伝わりません。

つまり、流行や売れることを求めた作品とは何なのかが明確にされないので、逆にここから対比的に主人公の深澤薫が求める理想の作品がどのような表現なのかも分からないのです。

ダメな要因の3点目は、主人公の深澤薫の周りの仕事関係での人物を、深澤薫のおかしさを際立させる為に、逆に極端に描いていたところです。

例えば、深澤薫の8年の連載終了後の打ち上げで携帯電話をいじり続ける編集者たち。
深澤薫の作品をまともに読まないままで取材しに来ているライター。
深澤薫がきちんとアシスタントの休職中のことも配慮しているのに、エキセントリックに「仕事を舐めないで下さい!」と深澤薫に激高するアシスタントの冨田奈央。

一般常識的にはあり得ない人物のオンパレードです。

もちろんどれもが実際に存在した人物だったのかもしれませんが、それぞれの人物はその極端な一面だけが描かれ、なぜそのような(異様な)行動を彼らがしているのかの裏側を描こうとしていないので、意味不明の人物たちのままで表現されていると私には思われました。

このような、主人公を際立たせるために、周りのわき役を道具的に扱う他の映画や作品もなくはありません。
しかしこのような道具的な人物描写は、薄っぺらい人間理解から出てしまっていて、”駄作”といわれる作品にしか許されない人物描写だと私には思われています。
(演者の役者の皆さんは脚本演出に従ってそれぞれ演じていると思われるので、全く罪はないとは他作品含めて思われていますが‥)

一方で、この映画の原作である漫画「零落」は、おそらくはその天才的な作品を数多く描いてきた漫画家・浅野いにおさんの他作品(あるいは「零落」で描かれている漫画自体)が前提になっている作品だと思われます。

つまり、原作漫画「零落」の読者は、浅野いにおさんの画力やコマ割りの秀逸さを甘受しながら、おそらくは、主人公の深澤薫の流行や売れている漫画に対する否定の主張に説得力を感じて、原作の方は読んでいたのではと推察します。

しかしこの映画『零落』は、肝心の深澤薫の作品中身がほぼ示されていないので、深澤薫の主張は全て上滑りし、仕事での周りの登場人物も全て誇張された道具にしか映らないのだと思われました。

そもそも、深澤薫が理想とするような作品にも現在性や表現の最先端(つまり流行や売れる要素)が含まれていると思われますし、一見は流行や売れることだけを狙っている作品でも普遍的な深澤薫が理想とするような内容も含まれているはずです。

つまり、理想の作品と、流行・売れる作品とを、明確に分けて捉えている認識自体がそもそも間違っていると私には思われるのです。
そんなに何事も単純に分けられると考えられるのは、浅はかな人間理解の人にしか許されない態度だと私には思われています。

この映画は、ラストに映画の冒頭でも出て来た猫顔の少女(玉城ティナさん)が、主人公の深澤薫は「○○だ」と明かして終わります。

しかし私には、深澤薫の主張に説得力を感じさせる場面のないこの映画を見て、(猫顔の少女が言っていた、深澤薫は「○○だ」は、単なる作者・監督の自惚れであり)主人公の深澤薫は、中身が空洞の【未成熟の人物だ】と思わされました。

全ての登場人物に多面性を持たせて愛があった傑作『無能の人』を撮った竹中直人 監督にしては、個人的には大変残念な中身の映画になってしまったと、僭越思われました。

このレビューはネタバレを含みます

質は高い。漫画家と風俗嬢。正体明かさない者同士の夏休み。でも何故この男は過去の女の思い出に殺されなければならないのか?良くある邦画的な限界。
テアトル新宿に飾ってある燃え殻の言葉「見たことある気がする。あの瞳、あの絶望。」その通りすぎる。
hirooooo

hiroooooの感想・評価

3.5

このレビューはネタバレを含みます

予備知識持たずに予告のみで観に行ったのだけど齋藤工が不器用なだけでほんとは気持ちがある人なのか、ほんとに最低な人間なのかが結局はわからなかった…

私的には奥さんとよりを戻して欲しかったし子供が欲しかったんじゃないのかな?(家族を持ちたかった)って思ったんだけどやっぱり売れたかっただけなのかな?
最後の方なんだかモヤっとしてしまったし
エンドロールおわってからのちふゆちゃんとのシーンいる?っておもってしまった。

わたしは普通の人だからわからないけどアーティストさんってみんなこんな感じなのかな?って。勝手ながら私が好きなアーティストさんたちを思い浮かべたり、私はずっと一途にいくえみ綾さんが大好きすぎてほんとに発売日に必ず漫画を買ってるのだけど漫画家ってみんなが漫画が好きじゃないのかな?とかなんか少しだけザワザワしてしまった。

特に最後のシーン。ほんとに素直に読んだり聴いたりすることで元気もらえたりわたしもがんばろ!って思うことが数多くあるけれどそれはありがた迷惑なのか、、、
とすごく悩んでしまった。

そして齋藤工はエロくてなんかずるいな。
山下リオちゃん好きなのに嫌いになりそうなくらい彼女は演技が上手。
いつも難しい役所を演じわけてて素晴らしいなーと思います。
AKIROCK

AKIROCKの感想・評価

3.8
根が暗い人間です
凋落する様を描いたデカダンス的な作品が大好きな人間です

竹中直人監督最新作はまさにそれ
人気漫画家の落ちぶれていく様を描いた作品

斎藤工演じた主人公は化け物だった
自分勝手で妬みやで、人を平気で傷つける、性格最悪な嫌な奴
しかしそれが本当に人間らしい本性だったりする

出てくるホテトル嬢が個性的で物凄く優しくて、クスッと笑えた

永積隆、志磨君、あらきゆうこ、HAKASE-SUN他、監督の人脈か?ミュージシャンが沢山出演されていて、音楽好きには嬉しかったです♬
m

mの感想・評価

1.0
読み終わりたくなくて少しずつ大事に読んだくらい原作が大好きなのでかなり苦痛だった。でもサイン会での近藤はとてもとても良かった。たった数秒の、台詞もないシーンだけど良すぎて込み上げる涙を我慢できなかった。
斎藤工演じる、描けなくなった”元“人気漫画家の話。
「フェイブルマンズ」でも描かれた芸術家の孤独に関する物語なのだが、この主人公はそれ以前に徹底的な非共感キャラ。
世界は自分が中心で、ダメなことは全て人のせい。
孤立すると、金で買えるデリヘル嬢に入れ上げて現実逃避。
ぶっちゃけ、どうしようも無いクズ野郎なんだが、主人公をそれでもどこか憎めないと思うか、1ミリも理解できないと思うかで、受け取り方が180度変わるだろう。
自分がダメ人間の私は、嫌な奴だなと思いつつ、ちょっと感情移入してしまった。
この人、とりあえず漫画に対しては真剣で、いわゆる“売れる漫画“だけを求められることが我慢ならない。
引っかかったのは、じゃあ彼自身はどんな漫画を描きたいのか?が描かれないことで、ちょっと片手落ちに感じる。
主人公含め主要キャラがことごとく変人なんだが、漫画編集者の主人公の妻が、クズ夫と別れたがらないのが一番異様に感じる。
「漫画家としての彼の一番の理解者」というのは、主人公の描きたいものが明示されてはじめて説得力が出るのではないだろうか?
コレがあればもうちょっと主人公が理解しやすいというか、作品そのものも一般性を持ち得たんじゃないかなあ。
擦り切れた情熱の果て、燻る懊悩が業と化す。長期連載を終え、次回作が描けないことに苦しむ漫画家の深澤。仕事への失望、家庭の不和、限界に近付く彼は偶然出会った風俗嬢のちふゆに魅せられていく。暴かれる深澤の真の姿とは。張り詰めた空気感に引き込まれました。とても良かった。
な

なの感想・評価

4.0
原作のファン。楽しみにしていた映画。

なんか個人的にだけど、全然そんな事はないんだろうけど、キャスティングに若干違和感があった。。。

売れたら辛い、という、自分には理解出来ない世界観。

とてつもなくエゴイストだった。
あんたバケモンだよ結局。
タロウ

タロウの感想・評価

3.5

このレビューはネタバレを含みます

『零落』




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8年間に及ぶ漫画連載を終えた深澤(演: 斎藤工)。それなりに人気も獲得していた作品だったが、数多の作品が生み出される中で瞬く間に世間の反応は移り変わっていった。次回作に取りかかろうにも、高すぎるそのプライド故かまるでアイデアが浮かんでこない。編集者として働く妻にもアシスタントの若造にも自身の思いは伝わらず、次第に生きる目的を失っていく彼は、とある猫顔の風俗嬢・ちふゆ(演: 趣里)に惹かれるようになり、、
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※『劇場』(2020)という映画のネタバレも含みます※

 映画見終わってからパッと思い浮かんだのが『劇場』。作品の作り手にスポットを当てた物語、その作り手が抱く嫉妬や葛藤によって徐々に周囲の人々を傷つけていってしまう展開等がどこか既視感あって、山崎賢人演じる永田がうっすら深澤に重なった。

 2人が立場的に「作品が、自分の名が売れなければ意味が無い」と強く考えるのは頷けるとしても、一作り手としてのプライドでどんどん苦しくなっていくし周りも苦しめていくのは見ていてただただ辛い気持ちになる。それが今作の方でより顕著だった。

 ちふゆと出会って深澤の乾ききった心に潤いが生まれて、救われていったはずなのに夫として、作家として見たときには両手放しで喜べないままラストに向かっていく。『劇場』の方では沙希ちゃんもちろん辛い展開だけれど、永田が自分自身のありのままの姿を作品へと昇華させた姿に確かな希望を感じた。けれど今作ではそうはいかない展開。どんどん落ちていく主人公がもう一度作家として返り咲いた!けれど「バカでも泣けるように描いた」と冷たく言い放つ姿に、コンテンツを生み出す上で諦めではないにしても、作家として落ちるところまで落ちたような虚しさを感じた。
 そしてラスト、一度は伏せられたティナちゃんの言葉を聞くと前作「さよならサンセット」も同じようにして描かれたものなんじゃないかと思えてしまう寂しさが残った。

memo
何度も差し込まれる波打つ浜辺は、何を表していたんだろう。
安達祐実さんお綺麗過ぎてあの登場時間じゃ全然足りません。もっと見たかった!
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