ノラネコの呑んで観るシネマ

零落のノラネコの呑んで観るシネマのレビュー・感想・評価

零落(2023年製作の映画)
3.9
斎藤工演じる、描けなくなった”元“人気漫画家の話。
「フェイブルマンズ」でも描かれた芸術家の孤独に関する物語なのだが、この主人公はそれ以前に徹底的な非共感キャラ。
世界は自分が中心で、ダメなことは全て人のせい。
孤立すると、金で買えるデリヘル嬢に入れ上げて現実逃避。
ぶっちゃけ、どうしようも無いクズ野郎なんだが、主人公をそれでもどこか憎めないと思うか、1ミリも理解できないと思うかで、受け取り方が180度変わるだろう。
自分がダメ人間の私は、嫌な奴だなと思いつつ、ちょっと感情移入してしまった。
この人、とりあえず漫画に対しては真剣で、いわゆる“売れる漫画“だけを求められることが我慢ならない。
引っかかったのは、じゃあ彼自身はどんな漫画を描きたいのか?が描かれないことで、ちょっと片手落ちに感じる。
主人公含め主要キャラがことごとく変人なんだが、漫画編集者の主人公の妻が、クズ夫と別れたがらないのが一番異様に感じる。
「漫画家としての彼の一番の理解者」というのは、主人公の描きたいものが明示されてはじめて説得力が出るのではないだろうか?
コレがあればもうちょっと主人公が理解しやすいというか、作品そのものも一般性を持ち得たんじゃないかなあ。