菩薩

二十歳の息子の菩薩のレビュー・感想・評価

二十歳の息子(2022年製作の映画)
3.5
おそろしく曖昧でいい意味で胡散臭さくて、劇中の言葉を借りればひたすらにグレーな作品である為に言葉に詰まるが、どうして勇気氏が渉青年を受け入れる決断をしたかと言えば勿論「大好き」だからであり、彼は「見ること」を選んだ、いや選ばざるを得なかった人生を生きて来た人で、そこは二人に共通する部分なのだと思った。見ること、見続けることはやはり途方も無い労力と苦痛を伴うことで、だからこそ彼は人と人とが傷付け合わずにはいられない人の世に於いて非当事者性を盾に目を背けることを厭わない人間に対してはあんなにも苛烈な言葉をぶつけてしまうのだろうけど、ただ見過ぎることもやはり暴力的なのであって、その点この作品の中に流れる曖昧さは丁度いい距離感と言うのものを構築していたんだと思う。実際隣り合った部屋で二人がどの様に生活をしていただとか、少しばかり服装も髪型も大人びた渉青年の生活がどう変化したかだとか、そんな事も想像することしか出来ないが、本当に渉青年にとって勇気氏が「帰る場所」となっているのであれば、二人の間に築き上げられた関係性、更にその外側に出来上がった輪を「家族」と呼んでも差し支え無いのだろう。無関心も無神経も無遠慮も、やはりその使い分けが大事だなと。引越しで始まり引っ越しで終わる居場所の映画。
菩薩

菩薩