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オットーという男のTSのレビュー・感想・評価

オットーという男(2022年製作の映画)
3.9
【変わり者おじさんの過去】82点
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監督:マーク・フォースター
製作国:スウェーデン/アメリカ
ジャンル:ドラマ
収録時間:126分
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 2023年劇場鑑賞15本目。
 なんか観たことある内容だなと思って観ていて、鑑賞後に調べたら納得笑 スウェーデンの『幸せなひとりぼっち』のハリウッドリメイクでしたか!いやはや、無知にも程があるというか、下調べをしていないとこういうことになるのですね笑 もしかしたらリメイクと知っていたら、劇場に足を運んでいなかった可能性があります。なぜなら、良作のリメイクは大体それを超えることができないからです。もっとも、今月末に公開される『生きる LIVING』はかの黒澤明の傑作『生きる』のリメイクであるため、オリジナルを超えられないにしろ興味はありますが。で、今作はトム・ハンクスの安定さもあるのか、かなり良い感じに作られており非常に良かったです。観ている時はリメイクとしらずに、これは82点くらいかなあと思って、自分の『幸せなひとりぼっち』の記事を見返したら82点だったから笑いました。自分の感覚に寸分の狂いなしといったところですね。

 町内で嫌われ者の偏屈おじさんであるオットーは、妻ソーニャに先立たれて生きる意味を失っていた。彼はホームセンターで購入したロープを用いて自死を試みるのだが。。

 オリジナルの細部まであまり覚えていないので比較検討は雑になってしまいますが、最初の首吊りをしようとする展開はほぼ同じ。でもとても自死しようとしている人の振るまいには見えないのです。駐車違反をする車には滅茶苦茶噛み付くし、色んな意味でお節介。だから今回も今から死のうとしてるのに、目の前に違反車両がきたから中断するという始末笑 本当に死ぬのならそんなこと気にする義理もないはず。なんというか、それ以上にソーニャと過ごした聖地を汚されるのが嫌だったのでしょう。しっかり正装したり、新聞紙を敷いたり、とにかく自死しようとしてもどこか紳士的で、頑固ながらもまわりの配慮もしているというところが興味深いです。

 そんな中、メキシコから移住してきた一家が隣に引っ越してきます。この出会いがオットーの運命を変えていきます。最愛の妻を亡くしたオットーは、生きる希望や楽しみをなくしていました。そこに、良くも悪くもずかずかとオットーのプライベートに入り込んでいくマリソル達。最初オットーは彼女らをバカモン扱いしますが、徐々に心境に変化が出始めてきます。

 ところどころに若かりし時の二人の回想が入るのは良かったですね。特にソーニャが本を落として、それを届けるために反対方向に向かう列車に乗って出会うシーンは印象的でした。恋愛はこんなひょんなことから始まるものでもあるのです。

 これ以降の話は実際に見てほしいのですが、やはり終盤は泣ける展開になっていきます。人は大切な人を失った時、ある意味現実逃避状態となり、ある者は呆然として前に進めず、ある者はその後を追ってしまうのです。そういう人たちにちょっぴり勇気と希望を与えてくれる映画だと思います。今作も良いですがもちろんオリジナルも良いです。どちらも良作なので見比べるのも面白いかもしれませんね。トム・ハンクスの演技、相変わらず見事でした。
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