このレビューはネタバレを含みます
物語の設定が実にミニマルで、ある場所のある日常を描いているにすぎないのだが、そこには確かにドラマがあって、そのドラマをずっと切り取っているようで観ていて飽きない。しかも、小さなドラマひとつひとつが最後に大きなドラマとなって立ち現れてくるから、本作が丁寧に作られた作品だと言うことが良く分かる。
作品の丁寧さという観点から言えば、タイトルが出るまでにオットーとその周りにいる人間の性格やバックグラウンドを描くのが本当に上手かった。物語にとって必然である出来事の中でさりげなく説明しているところに好感が持てる。あの短い時間の中で、本作において必要な人物は既に網羅しているから、そのあとの出来事によって彼らのキャラクター性に深みが出てくる。キャラクターの魅力に引っ張られる物語のお手本とも言うべき作りで、自分自身も脚本を書くときは著しくキャラクターにこだわるから、見習わなければならない。
生きることとは何かを考えさせられる素晴らしい映画だった。