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そして愛に至るのアガナシInOUsのレビュー・感想・評価

そして愛に至る(2000年製作の映画)
3.6
冒頭部には、のちの本篇のモチーフを散りばめた映画制作過程のほかに、子どもたちも映り、ごくアットホームな雰囲気があるので、当初は全篇ドキュメンタリーかと勘違いしそうになるけど、勿論そうではなく、これは20世紀以降のフランスに伝統的な「オートフィクション」を映画で実践するものなんだと分かる。

そうすると、本篇の会話・対話は全て「フィクション」として、ある意味で聞き流し、ちょっとした冗談程度に追ってるぐらいが、本来観やすかったのかも。実際、アルチュールの登場で、他三人の会話・対話は、相対化され、内輪ノリと化したように思われるし。

けど、全てそれじゃダメというのが、オートフィクションの核心で、本篇ピークのロベール(ゴダール)の涙は、フィクションとリアルの結節点・結晶点な気がする。「今まで一緒に、内輪ノリをやってきたじゃないの」感。ただ、それ以降の映画館のシーンは、あまりにクサくて、ちょっと興醒め感あった。ちょっと。

あと、ムチの場面と、森の小径の場面は、なんでも言えそうなぐらい、純粋なイメージ(図像)なんだけど、個人的には、ムチの攻撃性が次第に消し去られていく(鋭い音が消え、動きも緩慢になり、より「美」になる)編集が好き。映像と音楽は、超優等生でしたが、これも個人的には、以前観た同監督短篇「マリアの本」のダンスみたいな高揚感が欲しかった。最後の映画館のシーンは、ソレになり得ないし。
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