回想シーンでご飯3杯いける

怪物の回想シーンでご飯3杯いけるのレビュー・感想・評価

怪物(2023年製作の映画)
4.3
忽然と姿を消した2人の少年。そこに至る経緯を、母親、教師、少年、の3つの視点で描く作品である。

監督は是枝裕和で、脚本は坂元裕二という超豪華な布陣。両者の持ち味が存分に活かされたとも言えるが、敢えて言えば、両者の持ち味が双方の個性にある種の抑制を与え、2人がこれまでに手掛けたどの作品とも違う、本作ならではの感触を強く感じる。これまでの是枝作品に比べるとストーリーのテンポが速く、これまでの坂元作品に比べると、観客の想像に委ねる部分が大きい、、、と言えば良いだろうか。

ストーリーの詳細には敢て触れないが、3つの視点の交わり方が秀逸だ。台詞や行動をキーワードに繋がっていくのは勿論、音まで伏線になっているとは驚きである。プロフィールに「映画を彩る音楽や音響には自然と耳が行ってしまいます」と書いている僕には目からうろこであり、最も強烈に心をえぐられるシーンであった。

作品のテーマを敢えて挙げるとすれば「偏見」という事になるだろうか。話は少しそれるが、Filmarksでは軒並み高評価の本作も、某大手レビューサイトでは最低点の「1」点レビューが大量に投稿されている。同じ映画を観ても、こうも捉え方が違うのかと、本作が掲げたテーマの重要性を改めて思い知るのである。