冷蔵庫とプリンター

レニの冷蔵庫とプリンターのレビュー・感想・評価

レニ(1993年製作の映画)
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【悪魔と契約した芸術家】
齢90になるリーフェンシュタールに取材し、その人生と作品を追ったドキュメンタリー。言わずもがなリーフェンシュタールは『意志の勝利』『オリンピア二部作』の監督であり、芸術性の高さを賞賛される一方でナチズムとあまりにも深く結びついている(ように見える)ために糾弾された作家である。この作家に対する評価の難しさは本作を見ても変わらないが、丹念にこの3時間を追えば、レニ本人の内面が浮かび上がってくる。彼女はナチ党員にはついぞなることはなかったが、明らかにナチスに同調している。『意志の勝利』を制作したことを心から悔やんでいると言いながらも、その演出に関しては嬉々として答えている。また、ゲッベルスやナチス幹部との交流を否定する、その真偽は定かではないが、少なくともナチスが行った蛮行に関して「知らなかった」「私はその場にいなかった」で逃げを打っているところから、彼女に非がないわけではないことはわかる。
しかし、そのことが、レニの生み出した作品の評価にどれほどの影響を与えうるかは非常に難しい。エイゼンシュタイン、グリフィスなども同様であろう。
とはいえ、我々は見なければいけない。見て評価を下さねばならない。そんな気にさせる映画だった。