KUBO

波紋のKUBOのレビュー・感想・評価

波紋(2023年製作の映画)
3.7
5月3本目の試写会は『波紋』トークイベント付試写会。

これ、予告編見て「荻上直子がこんな怖そうな映画撮るんだ〜」って興味津々で見たけど、いろんな意味で騙された。

3.11直後、妻と子供と寝たきりの祖父を捨てて失踪した夫(光石研)がふらっと帰ってきた。夫は「癌になった」というが、誤りもせず「死んだ親の遺産はどうなった?」などと悪びれもせずに言う。残されて、ひとりで介護をし、義父を看取り、子供を育てた妻(筒井真理子)は怒り心頭だが、それを爆発させられずに、イライラ、イライラ! 謎の水を売りつける新興宗教にすがり、なんとか耐え忍ぶ妻だったが…

そこで、予告編にあった、同僚の清掃婦のおばちゃん(木野花)の「やっちゃえば?」が出るんだけど、このどよ〜んとした重苦しい空気の中、実はどんどん笑いが込み上げてくるのはなぜ?(笑)

実はこれ、かなりのブラックユーモア満載の作品!

夫に対する妻の不満や、老人介護問題、カルトのような新興宗教問題、身体障害者への差別問題、様々な問題にけっこう本音でズバズバ言っちゃったり、やっちゃったりするから、ヤバいこと見てて、ずっとクスクス、ゲラゲラ。

「あんた、ずいぶんストレートに差別発言するね!」

介護している義父に「あんなこと」してしまったり、イラつく夫に「こんなこと」してしまったり、本当にしようが、しまいが「やってみたい!」という共感度はきっとかなり高い!

このイライラ・エンターテイメントを支えているのが、ウルトラ芸達者な俳優さんたち!

主演の筒井真理子は深田晃司監督の『よこがお』で大注目した女優さんだが、本作での熱演&怪演でさらに注目度アップ! すごい表現力を持った女優さんだ!

また、夫役の光石研がイラつかせる演技が上手すぎて、絶対見てる人は妻に共感して「死ね」と思う(笑)。

宗教団体の信者役に安藤玉恵と江口のりこって、あの不気味なスマイルで寄ってこられたらもう気持ち悪くてたまらない(笑)。

そして、妻・依子(筒井真理子)にズバッと本音でアドバイスしてくれるおばちゃん役の木野花さんの存在感たるや、なんと心強いことでしょう!(ま、このおばちゃんにもいろいろあるんだけどね)

もひとつ、柄本明の半額おじさんもよかったな〜。

荻上直子監督って、どうしても『かもめ食堂』のほんわかしたイメージを思い浮かべちゃうんだけど、ご本人はかなりの変人。

この不穏な空気からのブラックコメディは、けっこう荻上監督本人の個性が一番ストレートに出た作品なんじゃないかなぁ?

どうだろう? 評価分かれるかなぁ? 見る人選ぶかなぁ? 私はおもしろかったけどね。

でも、この筒井真理子は必見だよ!
KUBO

KUBO