垂直落下式サミング

最後まで行くの垂直落下式サミングのレビュー・感想・評価

最後まで行く(2023年製作の映画)
3.0
うん、普通。なんか入口から、ちがうお店に入っちゃった気がしましたけれども、ちゃんと『最後まで行く』だった気もする。
オリジナル版は、事態のエスカレーションと描写のソリッドさがよかったのに、いろんなもんが付け足され、削られて、日本人好きする味わいに…。辛味のない韓国料理、あなたは好き好んで食べたいっすか?
うーん。主役が好きになれない。なんせ、岡田くんがひどい。やたらとオーバーリアクションはなんなんだろう。セリフ、表情、息遣い、挙動、全部つまんない。演技をなんでもかんでも過剰にしているから、嘘っぽいんですよね。
主人公が、明るみに出てはならない真実を必死になって隠蔽しようとするはなしなのに、ヒイヒイゼイゼイどころか、セリフで状況説明までしてくれるのは喚きすぎ。
安直に狼狽えすぎる。コメディータッチにしても、ここまでうるさいと生き延びるためにマジメに行動していないようにみえちゃう。心臓はドキドキ脈拍バクバクなのに人前では平静を装おうとするから、この手のコメディは成立するんよ。
一応は、人を轢くまでと母親の棺桶に死体を入れて埋葬するくだりは丸まんま。キリスト教の土葬が風習として根強い韓国だから成り立っていたはなしを、火葬が主流の日本に置き換えたらどうなるかって、改変したらこうも鈍臭くなるか。納棺してお通夜して葬式して火葬って手順を踏む日本において、そもそも、この設定は厳しいものがあったのではないか?
なんせ、組織と人物の相関図に入れ込み過ぎる。そんなん興味ねえよ。見所は、汚職警官が右往左往する保身隠蔽劇場と、男同士の肉弾戦だったはずなんだけどな。こんなだから、敵の綾野剛も縁なしメガネで気取ってるだけの時間が多くて、だいぶ損してるし。
でも、さすがに綾野剛でした。結婚式でハメられたことに気づいて、怒りを噛み殺した悔し泣き顔とかは、今年の助演男優賞候補。
終盤にかけて、綾野剛も組織のなかでの立場が危ぶまれていることがわかってきて、クライマックスで保身が成り立たないところまで逆に追い込まれて暴走してくるのは、よく感情が乗っていたと思う。
まあ、どっちにしても、僕はオリジナル版のストーリーやキャラクターのほうが好み。別物ってことは承知した上で、こっちは好みじゃないってこと。