アニメーションの神様ユーリ・ノルシュテインの監督第5作にして代表作。
描かれる内容は、「ハリネズミのヨージフが、友達の小熊に会いにいく」という道中だけ。
なのに、見ているこちらの心をざわつかせるパンチがあります。といっても、決して重苦しいわけではなく、なんと言いますか、観客である我々が幼少期に漠然と感じていた、この世界に対する不思議を思い起こさせるとでもいいましょうか。
得体がしれないもの・出来事、夜の闇（霧）、一人ぼっちの心細さ、ナイーブで繊細な心、怖い夢、眠れぬ夜……、そんな様々な子供心に感じた不思議や恐れを、再び眼前に突きつけられたような、奇妙なノスタルジーを想起させる作品です。
霧の中を彷徨うハリネズミを見て、いつしか自分の心の中まで五里霧中状態……なんてプチトリップすること請け合いなファンタジーです。
小熊くんと合流しお茶ができたヨージフが向ける視線の果てには、一体何を見ているのか。
冒険により大人になっていくヨージフに自分たちの姿を重ねつつ、思いを馳せることができました。
原案は、現代ロシア児童文学の代表的作家セルゲイ・コズロフの、「ハリネズミと森の仲間達」シリーズの1作『きりのなかのはりねずみ』。
【受賞歴】
1976年 第9回全ソ連映画祭の最優秀賞
1977年 第10回テヘラン国際青少年映画祭の最優秀賞と金の大メダル、ロンドン・フェスティバル“年間最優秀映画”賞、ヒホン優秀短編児童映画賞
1978年 シドニー国際映画祭“銀のブーメラン”賞、シカゴ国際映画祭第三位“ブロンズヒュ－ゴ”賞、エシリニオ国際映画祭最優秀賞
