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きみの色のmitakosamaのレビュー・感想・評価

きみの色(2024年製作の映画)
3.9
山田尚子がサイエンスsaruに移り平家物語を経ての初の劇場版。今一番新作が期待されている監督とも言えるし、その期待に違わぬ出来だった。

キリスト教系高校を舞台にした物語。主人公のトツ子はゆるふわ系のポチャカワ。
相手のことを“色”で見ることが出来る。
山田尚子の少女の足首に特化したカメラアングルなどのフェチズムは有名だが、今作ではトツ湖の手首に注目!程良く脂肪の乗ったクリームパンっぽい手の甲の描写は明らかに意識していると断言できる!
劇中ではちゃんとした敬虔なクリスチャンなトツ子だが、自分の欲望にも素直なので突っ走る行動に出ることが多い。ので規律違反を犯してしまうことも。

トツ子の性格を表していることで特筆すべきは、他人に対して決して“「好き・嫌い」”や「“良い・悪い」で判断していないという点だ。あくまで色で認識しているだけ。 
色を見るが、色眼鏡で人を見ない性格なので他人に敵意を持たない。

そんなトツ子は学校を退学したキミちゃんと、島に住む青年ルイくんと仲良くなりバンドを組むこととなる。
キミちゃんはクール系優等生だったようだが学校を辞めたことを養育者の祖母に話せずにいる。
ルイくんはチョットした仕草がキャピキャピしてる優しい系男子だが、島唯一の医者の家系でプレッシャーに悩んでいる。

だがトツ子は家族も出て来るが両親の理解があり社会や家庭のストレスを感じさせない子として描かれている。

終盤にトツ子が自分の色が判明するが、キミちゃん=青、ルイくん=緑な事を考えれば“赤”なのは予想の範囲内だ。光の3原色で“白=無色”になるということは、3人が集まることで浄化される関係にあるとも解釈できる。その辺の解釈は観客に委ねクドクド説明しなかったことは好感が持てるね。

リズと青い鳥の流れをくむ線の細いビジュアルだが、「色」をテーマにしていながらも、登場人物達は色素の薄そうな、体温の低そうなキャラクターデザインをしている。
キャラの持つこの“フワフワ感”には人間の厭な部分が意図的に描かれていない。オブラートに包んだ人物描写だ。

またこの映画が高校生バンドをテーマにしたことも興味深い。ぼっちざろっくと比較すると判りやすいが、ぼっちや結束バンドにとって基本的にバンド活動や音楽は目的そのものだ。だがトツ子達にとってバンド活動は手段に過ぎないと思う。
それ故に音楽性の追求などは描かれないのだが、それでもテルミンが出てきたり、曲が個性的だったりと見どころ十分だ。

今作に関して難点を言えば、圧倒的にプロモーションがダメだと思う。
「きみの色」ってタイトルも弱い。「君の名は」ってビッグタイトルがあるんだから類似は避けるべきだったのに。
それにミスチルの主題歌も全然合ってない!!!このミスマッチ感は酷い。(曲自体が悪いと言っているのでは無い)せっかく音楽で見せる映画なのに、別のテーマ曲を設ける意味が分からない。
コレに関しては監督よりもプロデューサーが悪い。川村元気、オメーだよ、オメー!
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