先日(と言っても結構前だが)、教え子に実に20年ぶりに会った。
きっかけは彼女が連絡をくれたから。ほかの生徒から僕の連絡先を聞いたらしい。「会いませんか」怪しいのでドトールで待ち合わせをした。久々にあった彼女は少し年をとっていた(当たりまえだが)。そして少し疲れているような感じだった。学生時代は活発だった彼女がこんな顔になるんだと思ったものだ。
その後、しばらく世間話をした後、彼女は言った。「すいません。あの、あの申し訳ないんですが、先生にこんなこと言うのは本当に」、そして
「お金を5万でいいから貸してくれませんか」
やはりそうか。うすうす感じていたがそうだったのか。ちょっとこちらが逡巡していると彼女は「3万でもいいです。いや2万でも」ダメだと思っていたが3万貸してしまった。彼女はそのまま言った。「先生、このあとホテルにいきませんか」
この映画を見ているときずっと思い出したのは彼女のことだった。彼女は菊池凜子に似ていると僕は思ってしまった(実際には似ているのは長い黒髪だけだけど)。
40代から30代の人で苦しんでいる人はほんと多い。バブルが崩壊して20年。散々な目にあった世代だ。菊池もそうだろう。夢を持って東京に来たけど「散々な目」にしかあっていなかった。
だからこの映画は再生の物語だ(監督の意志が強すぎてたまにノイズになるのは残念だが)。ただ青森に行く、それだけなのに「そこから何かが出来る」かもしれない。だから彼女はただ「行く」。その「行く」を僕は肯定する。そこからひょっとして何かが変わるかもしれないから。
その後、ホテルに行くことは固辞し(いろんな計算をしてしまった。全く男と言うのはよくない)、彼女とは別れた。彼女は何度も何度も僕に頭を下げていた。
いまだに3万円は返ってきていない。