青二歳

春のめざめの青二歳のレビュー・感想・評価

春のめざめ(2006年製作の映画)
4.2
アレクサンドル・ペトロフのガラスペイントアニメーション。ファンタジーや夢の不条理においてイマジネーションを拡げることを得意としたペトロフがまさかの童貞映画を作ってくれました。
二人の女性に恋をする少年を始め人々の複雑な表情も見事ですが、何より性少年の妄想が最高。童貞の妄想なんて悪夢なのだ。

シーンのつなぎが、妄想や夢、モチーフとなっているツルゲーネフ“初恋”、心情表現のイマジネーションなどで展開するというのがすごい。リアルな人間関係よりも、表象でドラマが動いていく。映画としてはこれだけでも面白いのだけど、アニメーションならではのイメージがまた素晴らしい。火牛も香水もよかったが、直球に卑猥なのぞき箱の仕掛も効果的。
もちろんパーシャとの初々しいキスシーン、不思議な色気に満ちたセラフィーマの一瞥など、人物の描写も見事です。光の当たり方、髪の毛の乱れ、黒目の動き、唇の開き、それらも十分美しく見ごたえがあります。ただやはり油彩画ならではの柔らかい輪郭が活かされるのは表象がつなぐ夢や妄想でしょうか。劇中で少年が読むツルゲーネフの“初恋”のイメージと物語が絡むところもいかにもな童貞妄想という感じで素晴らしい。
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