Jeffrey

スクリーム2のJeffreyのレビュー・感想・評価

スクリーム2(1997年製作の映画)
3.8
「スクリーム2」

〜最初に一言、ムルナウ監督の大傑作サイレント映画「吸血鬼ノスフェラトゥ」がブラウン管テレビから流れ出す瞬間の嬉しさと数多くの映画のパロディー、オマージュが見て取れるトリロジー最高の2作目で、グレイヴンと脚本家ウィリアムソンがタッグを組んだ最後の作品でもある。90年代を生きてきた自分にとっては思い出深いホラー(スラッシャー)映画である〜

本作はケヴィン・ウィリアムソンが前作に引き続き脚本を手がけ、ウェス・クレイヴンが監督を務め、主演も引き続きネーヴ・キャンベルを筆頭に参加した1997年製作の人気ホラーの続編で、この度BDにて久々に鑑賞したが面白い。ティモシー・オリファント、サラ・ミシェル・ゲラー、ジェリー・オコンネルらも出演していて懐かしさを思い返す。なんと言っても冒頭のジェイダ・ピンケット・スミス(ウィル・スミスの嫁)とオマー・エップスが出ているのがおっ!となる。本作は全米で公開されるやいなや連続ベスト興行収入1億ドル突破、MTVムービー・アワード作品賞獲得、ビデオレンタルランキング6週連続ベスト1と1997年を代表する映画となった「スクリーム」の続編で、日本でも夏休みに公開されヒットした話題作だ。そのヒットを受けて続編が誕生。97年12月に公開されベスト1位となった、興収も前作同様に1億ドルを突破している。

やはり本作の魅力はズバリ続編であることだろう。いかに一作目の面白さをしのぐか?「スクリーム」は新鋭脚本家ケビン・ウィリアムスンとベテラン監督ウェス・クレイヴンのコンビネーションが成功の最大要因。「エルム街の悪夢」で知られていたホラーの鉄人グレイヴンは、従来のスタイルを打ち破り新しい恐怖を見出してヒットメーカーにカムバックした記念碑的な作品である。そして脚本家はストーリー・テリングを駆使した、予断を許さず結末が読めないジェットコースター・ショッカー・ミステリー(当時の言い回し)を生み出している。以前に脚本を書いた「Last Summer」(スクリームのレビューが終わったらLast Summerも見返したので、こちらもガッツリとレビューを書いて後ほど更新する)も3週連続ベスト1位に居座る大ヒットで、監督作も待機中、ウィリアムスンは当時最もハリウッドの期待を集める新しい才能となっていたと思う。

本作でもこのコンビがバリューアップした面白さを見せてくれている。そして、ブレイク寸前の若手人気オールスターもパワーアップしているのがファンとしては嬉しい。前作で登場したお決まりのメンバーに加えて、あのぽっちゃり体型の愛くるしさ満点だった「スタンド・バイ・ミー」の子役から「ザ・エージェント」で大きく脱皮したジェリー・オコンネルが出演しているのは最高だわ。「Last Summer」に主演したミシェル・ゲラー、そして「ナッティー・プロフェッサー」でエディ・マーフィの相手役を演じた(今ではウィルスミスの奥さん)ジェイダ・ピンケットが出演しているほか、映画中映画で「スクリーム」に相当する"スタブ"にTV「ビバリーヒルズ高校白書」のトーリ・スペリングや「ツインピークス」のヘザー・グラハムらが特別出演しているのも幅広い年齢層にこの映画を見てもらおうと言うマーケティングが見て取れてよかった。前置きはこの辺にして物語を説明していきたいと思う。




さて、物語はカリフォルニア州ウッズボローで起こった連続殺人事件から2年が経った。シドニー・プレスコットはウィンザー大学演劇家に進学、優しい恋人デレクやウッズボローの頃からの友達ランディ、映画オタクのミッキー、彼女を気遣ってくれるルームメイトのハリーらに囲まれ、少しずつ平和で穏やかな生活を取り戻しつつあった。しかし、事件は過去となったわけではなかった。しぶとく生き残ったレポーターのゲイル・ウィザーズが事件を本にまとめてベストセラーとなり、それに目をつけたハリウッドが"スタブ"と言うタイトルで映画化してしまう。加えて彼女の小説はシドニーの母親連続殺害容疑者であったコットン・ウェアリーを無罪方面するのにもひと役買っていた。

枕元の電話のベルが鳴る。受話器を取ったシドニーに"いやーシドニー。君の好きなホラー映画は?"と声が囁く。しかしそれは、ただのいたずら電話だった。こんな電話が多くなったのも"スタブ"の声だった。そんなある朝、トップニュースでウィンザー大学のキャンパスがテレビに映し出される。大学に通うモーリーンとフィルがスタッフの試写会で惨殺されたのだった。再びシドニーの周辺は騒然となる。キャンパスに溢れるほど人の姿。レポーターの先頭を切るのはゲイル。何もかも2年前の再現のようである。忌まわしい記憶がシドニーの胸に蘇る。そんな彼女の前にゲイルがいきなりコットンを連れてきた。断りもなく、話題性のある2人の独占会見を仕組んだのだった。シドニーが激しく拒んで会見を失敗に終わらしたものの、全国放送に出演していたコットンとトップニュースを作りたいゲイルは簡単にはあきらめない。

傷つくシドニーの前に懐かしい顔が現れる。2年前の事件で殺された親友テイタムの兄で元保安官補のデューイ・ライリーだった。ニュースを見てシドニーを守ろうとウッズボローからやってきたのだった。デューイはシドニーの周囲の友達を疑っており、同郷のランディと容疑者を割り出そうとする。殺人は続いていく。パーティーで無人となった女子寮でシーシーが殺される。神出鬼没の犯人はシドニーにも迫りくるが、間一髪のところデレクが来て助けに入る。デューイもあわてて駆けつけるが、残されていたのは腕を刺されたデレクだけだった。ゲイルは取材を進めていくうちに、最初の犠牲者であるカップルやシーシーと2年前の事件との間に奇妙な共通点があることに気づく。被害者のファーストネームが一致しているのだ。

犯人は前回の事件を真似たコピーキャットなのか?それとも、やはりシドニーの周囲にいるのか?誰も信じられなくなったらシドニーを再び殺人鬼がつけ狙う。今度の犯人は誰だ?…とがっつり説明するとこんな感じで、映画が現実に変わる、その鮮やかな瞬間を描いた傑作である。いゃ〜、冒頭の"スタブ"の劇場に黒人のカップルがホラー映画を見に行く途中並んでいるときのサンドラ・ブロックの会話だったり、ホラー映画はアフリカ系の人種を排除してきたって言う流れの会話が面白い。その後にこの2人が地獄のように殺されるのがおったまげる。しかもスクリーンの前でガールフレンド(ナイフで刺されて)が立ち尽くしてジェスチャーする場面を他の盛り上がってる多くの観客が気づかずに騒いでいるのがなんとも切ないが、この演出もまたすごい引き込まれる最初の殺人エピソードとしてはグッドだと思う。

しかも、女の方がなんでこの場面で裸になるのか意味がわからない、男は内容の流れは知らないがビンビンだぜ。抜くなら自分の手でどうぞ…と言う場面がめっちゃ面白い。その後も最初は乗り気じゃなかったホラー映画に、いろいろと持論を話し、徐々にイライラを見せて、アホらしいからポップコーンを買いに行くと言う始末である。しかしながら最初に殺されるのが黒人と言うのも時代だなぁと思う。にしても、殺されるジェイダ・ピンケットのキャシなデコルテと肩幅が目立つのと、ベリーショートの髪型が彼女に似合っていて良い。またオマー・エップスがトイレで、あの殺され方は不意をつかれたアイデアだったな。障子に耳ありじゃないけど、トイレの壁に耳ありってトコかな。そんでファースト・エピソードが終わって、シドニーの話になるのだが、ベッドで目覚めて、犯人の声を真似ていたずら電話をする始まり方も非常によく出来てると思う。


しかも今度の相方(友人の女性は黒人)がアフリカ系女性と言う所も前作と違ってかなりマイノリティに配慮し始めている…のか、もしれない。それに、コートニー演じるウェザーズの記者のカメラマンが前作はふくよかな白人だったのが、今度は黒人になっているのもそれだろう。さて、続編にあたる本作は、前作の精神をそのまま持ってきている大胆な形になっている。それはオープニングにもっと最もよく表れている。まずここでは前作で起きた殺人事件が"スタブ"と言うタイトルのホラームービーになり、それが劇場で上映されている。最初の犠牲者になったケイシーをヘザー・グラハムが演じ、2年前の惨劇がリアルに再現される。そのスクリーンの前には、騒ぎまくる、あの不気味なハロウィンマスクをかぶった若者たちと、そのもっと向こうにはそれを見ている我々がいる。この居心地の悪さ、この不思議な感覚。そしてまた、若者たちが惨劇の再会を目撃すると同時に、我々の目にもそれが飛び込んでくる形式だ。この巧みな二重構造は見事である。

それに、愛すべきホラーオタクであるランディが映画の続編は、より過激になる、より死体が増えると言えば映画はそのとおりに展開している。前作同様、映画が現実に変わっていくのだ。それをより強調するために監督と脚本家は本当の現実を小出しにしている。それに固有名詞を繰り出し、読者を恐怖の世界に誘う、あのモダンホラーの帝王スティーブン・キングの雰囲気まで漂わせている。身近なテレビの人気者達大勢出演させたのも、エンターテイメント・ウィークリー(米国の雑誌)やダイアン・ソーヤ(米国ABCテレビの看板番組)プライム・タイム・ライブの司会者等の知られた固有名詞を出していたのもそのためなのだと思われる。そういえば映画ライターの渡辺麻紀氏は、本作で失敗している部分があると言い、それがランディの死だと語っていた。

やっぱりこの作品の画期的なところは、従来のホラー映画からの引用、盗作、模倣、パロディで構成されたてまさしくメタホラーの傑作と言うことだろう。大体物語の前半は成立しながら、元ネタ探しにワクワクするようなスタイルになっており、後半は奇抜な展開に、こういうオチなのか、二転三転、裏の裏を書いた結果=オモテ的な終わり方に終始笑ってしまうところもある。だから「スクリーム」の映画を見ながら、このシーンはこのホラー映画のパクリ、この場面はあれを下敷きにしているとかそう言ったのを頭の中で考えながら映画を見れると言う面白さがある。さて、ここからは本作に見る、映画への愛し方を少し紹介したいと思う。前作ほどではないものの、様々な映画タイトルや俳優、あるいは映画のオマージュやパロディが込められている。

例えばショッカー映画スタブの試写会の場面。映画館前の列に黒人のカップルが並んでいる。2人とも映画好きと見えて、サンドラ・ブロックを引き合いに出して、雑談している。女性側のモーリーンが、ホラーは昔から、黒人を排除してきたのと言う。確かに黒人を主演にしたホラー映画は少ないが、70年代前半にブラックムービーが流行して黒人主演でパロディにした「吸血鬼ブラキュラ」「吸血鬼ブラキュラの復活「」ブラッケンシュタイン」が制作されて評価を博している。映画スタブの中で犯人にクイズを出されている女優はヘザー・グラハム(一作目でドリュー・バリモアが演じた役柄)「ロスト・イン・スペース」にも出演して人気上昇中の注目株を起業してティーンエイジャーを劇場に足をお運びするマーケティングをしている。黒人カップルが試写に行き、その女性が上映中の映画のヒロインと同じようなタイミングで、スクリーン前で殺されるシーンが、「デモンズ」そっくりなのである。

映画スタブの本編が、ハッタリ効かせたネーミングによる特殊映像や仕掛けで上映。これは60年代の仕掛け映画の巨匠と呼ばれたウィリアム・キャッスルへのオマージュ。ダンテ監督の「マチネー 土曜日の午後はキっスで始まる」でも、キャッスルへのオマージュが込められていた。そういえば大学生活の場面で、寮にあるシドニーの部屋の中に「エルム街の悪夢」シリーズの殺人鬼フレディーが愛用したセーターがかけてあるのでそこも確認すると面白いかもしれない。多少色が違うものの、このデザインはフレディーのものと同じ。でも映画の設定は夏だから、サマーセーターってことも言えるかもしれないが同じ監督がとっているのだからまぁ十中八九そうだろう。映画論の講義に出てきた続編映画のタイトルは、「エイリアン2」「ターミネーター2 」(2作とも、監督はジェームズ・キャメロン)「ガバリン2」「ゴッド・ファーザーpart2」

嬉しいことにこの作品は、テレビから流れているモノクロ映画があるのだが、それはムルナウ監督の大傑作サイレント映画「吸血鬼ノスフェラトゥ」である(ちなみにドイツの監督で彼の最高傑作はジャネット・ゲイナーを主演にした「サンライズ」(ブルース・ウィルスが出ているサンライズと勘違いしないよう)にだと思う)。ミシェル・ゲラー演じる女の子がバルコニーから放り込まれて地上に落下してくたばる場面は「13日の金曜日完結編」にそっくりである。そういえば、突然シドニーが殺人鬼に襲われるが、鉄格子があって逃げられないシーンは「エルム街の悪夢」にもあったような気がする。友愛会のパーティーで、続編の傑作として「スター・ウォーズ帝国の逆襲」のタイトルをあげたら、ランディが続編でなく、三部作の1つだと答えた。これ7ってスター・ウォーズ」ファンなら、なんとも嬉しいセリフだと思えるのかもしれない。

何よりも笑ってしまったのが、殺人鬼から電話がかかってくるシーンで、犯人がお前の好きなホラーは?との問いに対し、ランディが学園の外で「ショーガール」と答えるのが笑える。この作品も既にBD化されていて廃盤だが、ようやく今年入リマスターで新たにBD化がされるのである。これはポール・ヴァーホーベン監督がショーガールを夢見る女性の生き方を描いた失敗作として知られているが、それをホラーとして挙げるところがかなり皮肉っぽくて面白い(ちなみに執筆者はショーガールは好きである)。それにデレクがシドニーにボディーガードについて、ケビン・コスナーは?と思わず聞いてしまうところは「ボディガード」(ホイットニー・ヒューストン主演)に出演している俳優だからだろう。そういや、学食でデレクは、「トップガン」のトム・クルーズになりきったつもりで、シドニーに愛を告白していたのも面白かった。

映画文筆家の鷲巣義明氏はこの作品にタランティーノの趣があったり「ターミネーター」の引用が結構あると言っていたな。確かにそんな感じもする。長々とレビューをしてきたが、この作品も前作に続き個人的には面白いと思う。まだ未見の方、好きはあると思うけどお勧めできる。
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