ヒロ

瞼の母のヒロのレビュー・感想・評価

瞼の母(1962年製作の映画)
4.0
母を訪ねて三千里どころではなく、母を訪ねて二十年。悪事に悪事を重ね、とうの昔に堅気を捨てた忠太郎のもとに江戸に母がいるかもしれないと風の知らせ。大切に想ってくれる母や妹がありながらやくざにかぶれる弟分・松方弘樹を説得し、その弟分の母に自らの母の面影を重ねる姿に涙。盲目の三味線弾きにもしやあなたは私の母ですか?と、年老いて身体を壊した誰にも相手にされない女郎にあなたは私の母ですか?と、遂に見つけた実の母から言われた「なんで堅気じゃないんだね」と「身寄りのない俺はヤクザになろうが誰も悲しまねぇんだ」と、ひっくり返った茶碗から愛する我が子の不在を強調する畳へのクローズアップ、その直後に繰り広げられる哀しみの十人斬り長回しワンカット、弟分にもあったように自分にも想ってくれる母と妹があったことを知るが時すでに遅し、目の前に手を伸ばせば届く幸福があるにも関わらず見て見ぬ振りして不幸に走る、これこそがメロドラマの鉄則。目を瞑れば大事な人が瞼の裏に隠れているというJポップあるあるの幻想はすべてこの映画に通じているのだろうということは容易に想像がつくが、この馬鹿馬鹿しい程シンプルなメロドラマにまんまとやられる自分もどうかしてる。

《錦之助映画祭り-時代劇の至宝・中村錦之助=萬屋錦之介-》
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