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殺人に関する短いフィルムのTSのレビュー・感想・評価

殺人に関する短いフィルム(1987年製作の映画)
3.7
【7分にもわたる惨殺シーン】78点
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監督:クシシュトフ・キエシロフスキ
製作国:ポーランド
ジャンル:ドラマ
収録時間:85分
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 クシシュトフ・キエシロフスキ監督の名前は多分一生噛んでしまうかもしれない笑 以前に興味本位でBlu-rayを購入していたのですが、なかなか興味深い内容でした。恐らく、多くの方は『ダンサーインザダーク』を思い出してしまう展開かもしれませんが、ここまで徹底して、人の惨殺シーンをじっくり描き、命ある生命がただの肉片と化す生々しさを表している作品はなかなかないように思えます。

 簡単に言うと、妹を亡くした青年が、衝動的に無関係のタクシー運転手を惨殺してしまい、彼はその罪を償わなければならなくなるという話です。このタクシー運転手の惨殺が起きるのが中盤あたり。そのシーンは7分ほどあり、一説によると映画史上最長クラスだとか。確かにある意味釘付けとなってしまいました。人はこんな無慈悲に簡単に殺されてしまうのかと唖然。何十年も確かにこの世を生きてきたはずなのに、なんの関係もない人物に殺されて人生を閉ざされてしまうのかと。そんなことを言えば、これまで見てきた幾重にもわたる映画でも、人を殺めるシーンはありました。だがしかし、今作ではそれが異様に長い程描かれているため、余計にリアルさが増すのです。可愛そうとかいう感情を飛び越えた何かがありました。

 そんな蛮行を国が見逃すわけもなく、弁護士の尽力も虚しく、彼は絞首刑となっていきます。そのシークエンスがまた強烈。タクシー運転手の惨殺と、国が実行する青年の死刑はある意味同じ死へ向かうシーンではあるのですが、どこか対照的であります。絞首刑のシーンをまじまじと見させられるとなると、どうしても『ダンサーインザダーク』を彷彿してしまいますが、こちらは超機械的であり同作とはまた違った衝撃を与えられます。ついさっきまで確かに動いていた生命が一瞬でそれではないものに変容する。そのあたりをリアルに、見事に描いた異色作と感じました。80分ほどしかないので短いのですが気が重たくなりましたね。
TS

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