安堵霊タラコフスキー

殺人に関する短いフィルムの安堵霊タラコフスキーのレビュー・感想・評価

殺人に関する短いフィルム(1987年製作の映画)
4.9
冒頭のネズミと猫の死骸から心を鷲掴みにされる、イメージと演出があまりに強烈な映画

全体的に水色なりセピアなりのフィルターがかかり、時折黒いぼかしのようなものも施された映像は実に不穏で見ているだけで鬱々とした気分にさせられるけど、この陰鬱で不気味な映像は他では中々味わえないものであるが故に実に魅力的に見えてしまう

タイトルにもある殺人が行われる描写も、まるでゴダールとブレッソンが合わさったかのような静的かつ動的な緊張感が堪能できるものとなっていて、シリアルキラーのように思われるのを恐れずに言うと、この殺人描写だけでもご飯を何杯も平らげられるってくらい鮮烈で見応えがあり最高だった

汝殺すなかれがテーマのため道徳的な場面もいくつかあったり展開に雑な部分があったりしたものの、この絶望感が溢れるあまり芸術的にすら思える描写と映像の見事さに比べたらあまりに些細なことだろう

偶然と一緒に収録されてたから久々に見たけど、キェシロフスキの映画はこういう映像の力が強い方がやはり断然良い