福福吉吉

聖なる復讐者の福福吉吉のレビュー・感想・評価

聖なる復讐者(2022年製作の映画)
3.5
◆あらすじ◆
青年イル(パク・ジニョン)には双子の弟で知的障がいのあるウォルがいたが、クリスマスの朝、ウォルがビルの貯水槽で遺体となって発見される。酷く暴行を受けた痕跡があり、ウォルの勤めるコンビニの監視カメラにウォルが不良グループに絡まれている姿が映っていた。イルは弟の復讐のため、不良グループのメンバーを追って少年院に入る。

◆感想◆
殺された弟の復讐のために少年院に入った兄の姿を描いた作品となっていて、短気で暴力的な兄と知的障がいを持ちながらも優しく温和な弟の二役をこなしたパク・ジニョンの好演技と、ストーリーの中で明らかにされる弟の死の真相の残酷さが印象的な作品となっています。

主人公のイルは両親が逃げて、祖母と弟のウォルを養うためにアウトローな仕事に手を出しており、彼の凶暴さが生き残るための術であったと思います。彼にとって知的障がいの弟ウォルについて大事にする気持ちと共にどこか煩わしいと思う気持ちがあって、その二つの心情がストーリーが進む中でも現れていて、心に突き刺さるものがありました。

死の直前に弟に絡んでいた不良グループを追って少年院に入ったイルなのですが、この少年院がかなり特殊で、イルが犯人と睨む不良グループがヒエラルキーの頂点にいてわがまま放題である一方、管理する教師のハンは全て暴力で片付けることから生徒たちに「狂犬」と言われていたりとあまりにも崩壊し過ぎていて、リアリティを感じなかったのですが、ヤンキー漫画の世界のようで各シーン過激に描かれていて面白かったです。

不良グループのジャフン、ヌリ、ヨンジュンは親が金持ちで全てを金で解決する悪党として描かれており、他の生徒たちも彼らに逆らうことができず、イルの壁となって立ちはだかります。しかし、それぞれに個性がある感じではなく、つるんでいるから厄介さがあってその辺りも現実の不良と似通っている気がしました。

イルは少年院内で四面楚歌になる中で、カウンセリング担当のチョ・スヌ(キム・ヨンミン)がイルの行動をいさめたり、復讐を辞めるように促すなど、真っ当な人物として描かれています。スヌが次第にイルの復讐に協力するように変わっていくのですが、そこに何か嫌な感じがして、安心できない味方キャラといった印象を受けました。

ストーリーが進む中で、イルの中にウォルを失った悲しみとともにウォルを救えなかったのはイル自身のせいではないかという気持ちが現れて苦悩します。所々でクリスマス前のイルたちの状況が描かれるのですが、そこにはウォルがイルに対して救援信号を発していたのじゃないのかという風に見えて、なんともやるせない気持ちになりました。

ラストはなんとも気持ちのすぐれないものになっていて、予想の範疇でしたが心に重くのしかかってきました。

暴力描写が激しいので苦手な方は避けるべき作品ですが、かなり過激で面白かったです。

鑑賞日:2025年3月16日
鑑賞方法:Amazon Prime Video
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