一人旅

さよならミス・ワイコフの一人旅のレビュー・感想・評価

さよならミス・ワイコフ(1978年製作の映画)
4.0
マーヴィン・J・チョムスキー監督作。

アメリカの作家ウィリアム・インジによる1970年発表の同名小説の映画化で、性の快楽に目覚めた女教師の行く末を描いた人間ドラマの佳作です。性に堕ちた女教師というシチュエーションが『ミスター・グッドバーを探して』(1977)を彷彿させます。

1950年代のカンザス州の田舎町フリーダムを舞台に、アルバイトの黒人学生に教室でレイプされたことをきっかけに生まれて初めての性の歓びに堕ちていく女性高校教師イヴリン・ワイコフの姿を描いた異色のドラマで、才色兼備ながら35歳まで処女を貫き若年性の更年期障害の診断を受けたヒロインが粗野な黒人学生との間で性交渉を繰り返していく様子と、やがて周囲の人々から偏見と非難の的にされてしまったヒロインの孤独な旅立ちまでを描いていきます。

レイプされたことに多大な精神的ショックを受けながらも2回目以降は性の快楽に積極的に身を任せていく真面目な女教師の行状と末路を、矛盾を抱えた繊細な女性心理を軸に淡々と見せていく作品で、白人女性と黒人男性の交わりに強い不快感と嫌悪感を示す周囲の人々の露骨な反応も残酷に描き込んで、50年代アメリカ中西部の保守性&人種差別を浮き彫りにしています。

そして、主演の英国人女優アン・ヘイウッドが文字通り体を張った熱演を披露していて、放課後の教室で黒人学生とセックスに耽る場面の生々しい性描写は製作年度を考慮すると公開当時相当の衝撃だったと思います。
一人旅

一人旅