ShojiTaniguchi

ゴジラxコング 新たなる帝国のShojiTaniguchiのレビュー・感想・評価

3.3
映画製作会社のレジェンダリーが展開する「モンスター・ヴァース」の第5作めで、前作「ゴジラvsコング」を手掛けたアダム・ウィンガードが引き続き監督を担っている。

前作でその存在が明らかになった広大な地底空洞を舞台の中心として、多くの観客が期待する通りに、コングとゴジラが激烈なケンカをブチかましつつ、これも多くの観客の期待通り、2体に共通する強大な敵が現れ、多くの観客の期待に応えて2体が協力しながらその敵に対峙する。
地底だけでなく地表世界のいくつかの都市部でも怪獣達がド派手に暴れるシーンがあるが、これまた多くの観客の期待通りに、現実でそれが壊れたら大変だよねという重要な建築物や遺産が、思わず笑ってしまうぐらいにことごとく破壊される。
コング・ゴジラ・新たな敵達に加えて、怪獣映画シリーズのファンにはきっと嬉しいもう一体の有名怪獣が派手に登場するが、それについては詳細を書かない方が良さそうなので控える。

地底空洞という設定はいかにもSFだけれど、太陽光が届かない世界でなぜか植物が生い茂りまくっていたり、超未来技術で開発されたようにしか見えないガジェットが登場したり、未知の人類種族が地底世界で開発した重力を操る超技術が謎に登場したりなど、科学考証はとっくに諦めたんだぜといわんばかりの大胆さで、ツッコミ出すとキリがないと感じるほど。
そういう部分に目くじらを立てて鑑賞する種類の映画ではないのだろうと理解した。

とはいえ、コングとゴジラほどの巨大サイズの生き物の動きや重量感について、物理的に明らかにあり得ないであろう俊敏さで描かれている部分には、さすがにちょっとどうなんだろうと感じた。
製作者達はリアリティよりも演出のスピード感やスリルを重視したかったのだろうと想像しつつも、その部分についてはもう少しリアルさを追求して欲しかった。
科学的描写の正確さにこだわった作品だけがいい作品ということでは全くないと思うけれど、大胆な物語であればあるほど、鑑賞している間は上手な嘘に騙されたいなという気持ち。

コングやゴジラといった巨大怪獣が登場する映画は、彼らが作品の主役なのでそうなりがちだとは分かりつつ、その周辺の人間ドラマが陳腐で退屈という評価が多いが、この作品でもまた同様のことを感じた。
むしろ、製作者達はそういった評価を受け入れた上で完全に開き直り、今作では人間ドラマを意図的に雑に扱っているようにすら見える。
それぞれの人物に最低限の行動の動機づけや物語の展開がないわけではないが、言葉でいちいち説明してくれない怪獣達の行動理由を解説する役割にとどまっている印象だった。
まぁそれでも、こういった作品の構造を考えると、仕方ないと考えるべきなのか…
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