MasaichiYaguchi

プチ・ニコラ パリがくれた幸せのMasaichiYaguchiのレビュー・感想・評価

3.8
フランスで50年以上愛される児童書「プチ・ニコラ」を初めてアニメ映画化し、第75回カンヌ国際映画祭スペシャル部門出品、2022年アヌシー国際アニメーション映画祭ではクリスタル賞を受賞した本作は、愛らしいアニメと共に、親友同士の原作者2人の楽しい創作過程と、秘められた過去が描かれていく。
パリの街にある小さなアトリエでは、イラストレーターのジャン=ジャック・サンペと作家のルネ・ゴシニが、ニコラという少年のキャラクターに命を吹き込んでいる。
いたずら好きなニコラがクラスメイトたちと織り成す愉快な日々を描きながら、サンペは自分が得られなかった幸せな少年時代を追体験し、一方、物語に最高の楽しさを与えるゴシニも、或る悲劇を胸に秘めていた。
ニコラの存在は、そんな原作者2人を固い絆で結びつけていく。
愉快なニコラの物語を作り出す原作者2人には辛い過去がある。
親子関係に悩み、暗い子ども時代を過ごしていたサンペ、第二次世界大戦時、ナチスドイツのフランス侵攻で、母の兄妹が強制収容所に送られたゴシニ、夫々が抱えた悲しみを“上書き”するように、ニコラの幸せな物語が紡がれていく。
「プチ・ニコラ」を初めてアニメ映画化するにあたっては、サンペがグラフィッククリエーターとして、ドローイングを確認するなど制作過程を見守り、カンヌでのワールドプレミア上映やアヌシーでの最高賞受賞を見届けた後、2022年8月に89歳で死去している。
だから本作には、サンペの原作とゴシニに対する深い愛情が詰まっていて、それがスクリーンから温かく伝わってきます。