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ペーパーシティ 東京大空襲の記憶のりのネタバレレビュー・内容・結末

4.0

このレビューはネタバレを含みます

Twitterでたまたま流れてきて、私は今戦争について知らなきゃいけないんじゃないか、この機会を逃してはいけないんじゃないか、そう思って観に行った。

上映後のトークショーで、監督は東京大空襲について日本人がよく知らないこと、アイデンティティとならないことに疑問を持ったことが制作のきっかけだと語っていた。
今日このペーパーシティを観て、社会のありかた、自分のありかたを考えさせられた。私の祖母は東京大空襲で家族を失ったと母に聞いた。祖母に直接そのことを聞きたかったけれど、辛い記憶を呼び起こすのではないかと勇気が出なかった。けれど聞いてみたいと思う。観た者の責任として。

東京大空襲が日本が始めた戦争の報復であったこと、国のために尽くして空襲も自分達で消火する訓練をしていたこと、結局10万人もの民間人が巻き込まれたこと、そこで亡くなった人々は広島長崎の原爆被害のように刻まれてはいないこと、国が補償していないこと。知らなかったあるいは知っていても深く意識したことのないことばかりだった。
この映画で出ていた証言者のお三方は皆亡くなられた。悲惨な歴史を忘れ、国が戦争へ進んでいくのが怖い。無関心な社会も恐ろしい。署名を集めて、集会をして、裁判を起こして、犠牲者の名前を一人一人集めて、草の根の活動は途方もなく感じたけれど、そうやって火を灯し続けていないと志は消えてしまうのだと思った。社会運動や社会活動はどこか自分とは遠いもので参加する勇気などなかったけれど、ちっぽけな力に思えてもやらなければいけないんだと思った。

この映画をオーストラリア人であるフランシス監督が作られたことを思う。最近、ジャニー喜多川の性暴力をBBCが報じたことを思い出す。個人はもっと怒らなければならないし、メディアは、社会は見逃してはいけないことを追求し続けなければいけない。

綺麗な隅田川の花火を観て、空襲を思い出す人がどれだけいるのだろうか。今この時代、綺麗なもの素敵なものに溢れているけれど、ただそれを享受するだけでいいんだろうか。
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