ろく

世界残酷物語のろくのレビュー・感想・評価

世界残酷物語(1962年製作の映画)
3.0
事実か事実でないかは問題ない。観ているものが事実だと思えばそれは「事実」なんだよ。

ってことシュレディンガーは言ってなかったっけ。

ヤコペッティが偽装満載で世に出したモンド・ムービー。でも久々にみるとどこが偽装でどこが真実かわからないなぁ(最後のカーゴ教は明らかにウソ臭いけど)。

あと意外と穏当な作品で間違っても「うわ、これ残酷だわ。ダメダメダメ」なんてシーンはそれほどでない。逆に優しい気分になれることもある映像。ヤコペッティ、意外といい人なんだろうか。

ストーリーはあってなきもの。文明社会と野蛮社会(まあヤコペッティにとってはだけど)を交互に見せることによって「文明は変になっている。逆に野蛮からも学ぶことはある」というレヴィ・ストロースを100倍薄めた感じのメッセージを読み取れることが出来るだろう。

ちなみにエロ、ほとんどなし(期待した。残念)。人間が死ぬシーンほとんどなし(あれ残酷物語じゃないの)。動物死ぬシーン満載(ああよくない!ああああよくない!殺して映像とっているんじゃないかとも思う。子猫物語同様)。

・海亀は死ぬとき丘に上がるらしい(これ、映像クルーが勝手に亀を陸においているだけなのでは)。陸でバタバタする海亀。どうみても周りに海はない。どうやってここに来たんだろう(まさかスタッフが持ってきた?)。

・ある島はサメで生計を立てている。だからかサメに噛まれ足や手がない人多数。……って住民のほぼ全員が足か手がないんだけど。あれ。そんなことってある。まさかそんな人をかき集めただけ?サメの怨みとばかり毒ウニを食わす住人(いいから殺せよ!)

・日本の東京では600万人の女性が日々400万人の男性に奉仕している(そんなはずある?でも言っていた)。で、女性はショーパンスポーツブラで男性の体洗ったり耳かきしたりしている(ソープと勘違いしてない?)

・中国では死にそうな人は「死人の部屋」に閉じ込められてその前で親族はその人が死ぬまで日夜宴会を繰り広げる(悲しげな音楽と楽しげな音楽が交互に流れるのがもう……って感じです)。

・カラーひよことフォアグラに関しては真実っぽいかなぁ。フォアグラにさせる鵞鳥に無理やり食事を食べさすのが嫌だなぁ。あれ見るとフォアグラなんかもう食べないでもいいんじゃないって思っちゃう(最近そんな動きあるよね)。昔縁日でよく売っていたカラーひよこもなんか非道。やめようぜ、こんなことは。

というわけで虚実皮膜な作品です(©近松門左衛門)。このシリーズが日本に来て中島貞夫の「実録シリーズ」になるわけで一番怖いのは

人間の好奇心かもね。
ろく

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