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岸辺露伴 ルーヴルへ行くのワンコのレビュー・感想・評価

岸辺露伴 ルーヴルへ行く(2023年製作の映画)
4.8
【示唆にとんでるんだけど…】

この原作漫画を初めて読んだ時、これは小説の方が想像力を掻き立てられて良いんじゃないかと思ったことを思い出した。

ルーブルの後押しが、この漫画原作のきっかけだったことを知ってもだ。

それほど最も黒い「黒」が示唆に富んでいるのだ。

映画を観てもなお、小説の方が良いという気持ちに変わりはないが、ノベライズされたものを改めて読むか否かは、この時点ではまだ決めていない。

荒木さんのジョジョの中で、岸辺露伴は最も好きなキャラクターだし、ヘブンズドアという発想も、あの顔がペラペラ本となってめくれる表現もすごく驚いて、荒木さんの発想の豊かさとその底なし加減も印象付けられた気がする。

NHKでドラマ化されることを知った時は、少し不安にもなったが、高橋一生さんと岸辺露伴のマッチっぷりも、ドラマで常連のキャラクターとなった泉くんこと飯豊まりえさんも想像を超えてきて、この「ルーブルへ行く」にも自ずと期待は高まっていた。

そして、この映画は面白かった……のだけれども、「黒い絵」は敢えて描かずに想像に委ねる方が良かったなんて思っている。これは、小説の方が良いと思うところと同じだ。

しかし、時代が交錯し、本当は、もっと時代も超越した物語となって、目眩くように問いかける構成は原作もそうだが、映画も良かったと思う。

最も黒いとは、最も暗い記憶や後悔の念だ。

邪悪という表現もあったが、愛する人の為にとは、邪悪なのか。
愛する人が何かに執着してしまうのは、邪悪なのか。
探究心は、邪悪なのか。
それを助けることも、邪悪なのか。

実は、「最も黒い」とは言うものの、最も黒い黒もさまざまなのだと言いたいのではないのか。

“最も”と言いながら、実は様々だと逆説的な示唆も含んで、この作品は面白さを増していると思う。

小説の方が良いという考えに変わりはないが、映画化にこぎつけたことやチャレンジ精神を加点したくなった。

※ 泉くんの暗いところのないキャラは、それもある意味、暗示的で大切なフレーバーだと思った。原作にはいないからね。

あとね、泉くんが5歳の時に亡くなったお父さんがルーブルに行った時に撮った記念写真。ナポレオン広場にガラスのピラミッドがあったけと、あれが完成したのは1989年なのさ。

泉くんは31歳だから、もし、2023年が舞台ならなんとかセーフだけど、原作当時だったらアウトだよななんて考えながら観てた。
余計なお世話笑
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