強く、優しく、可憐な女性像。
宮崎作品の中でも、主義主張の強さ、環境問題への彼の意識在り方を映し出した作品。同時にジブリヒロインの在り方、強くそれでいて優しい、考える女性像を提示してきてる辺り作家性を感じる。
とにかく世界観がSFファンタジーの世界で、過去に星にまで行った文明が滅びて千年、世界は汚染され腐海という毒(瘴気)を放つ森のあるという設定。
辺境の地の風の谷で暮らす族長の姫ナウシカが主人公。ある日辺境の騎士ユパ様が帰って来てすぐにトルメキアという軍事国家の航空船が腐海に住む蟲達を連れ、墜落して来たところから始まる。
ここから怒涛の冒険活劇だが、とにかくナウシカが強い、美しい、そして優しい……
戦闘の連続の中、気丈に振る舞うシーンも目立つが、現実を直視出来ない弱さもしっかり描きこんでいる。
また、腐海に住む蟲達の造形はアニメでしかリアリティを出せない力強さを持っている。特に王蟲のインパクトは凄まじい。
そして、墜落して来たトルメキアの船の中のあの物体の気持ち悪さと凶悪さ。旧文明の残した禍々しい遺物として圧倒的。
ストーリーは戦闘に次ぐ戦闘だが、演出が光るシーンが多い。特に空中での大型船内で、ガンシップという小型船に乗り換えるシーンなど素晴らしい。
そして腐海の真の謎、毒(瘴気)の問題が明かされる。
その後のラストに向かっての怒涛の展開は一種、宗教的とすら言えるほど優れた演出になっている。ここのカタルシスは本当に見事!
しかし、ここで物語は終わりを迎える。
綺麗な終わり方のようでもあるが、原作の漫画版ではまだまだ続くため、映画の終わりと漫画の終わりは違うと理解しておかなくてはならない。(そもそも映画製作段階では漫画は終わってなかったから当然の事)