GodSpeed楓

風の谷のナウシカのGodSpeed楓のレビュー・感想・評価

風の谷のナウシカ(1984年製作の映画)
5.0
宮崎駿氏の超傑作漫画の映画版。このご時世そのものは喜ぶべき事では無いのだが、映画館で鑑賞できた事には感動を禁じ得ない。既に何十回も観ているので、全編ストーリーも、セリフも、BGMまでも全て覚えているレベルである。にも関わらず、劇場で観ている殆どの時間で目をウルウルさせるか泣いていた。大画面、大音量というのもあると思うが、僕自身が大人になって気付くような点が増えたのが原因かもしれない。

昔から大好きな作品だが、子どもの頃は特別泣いたりするシーンは無かった。それでも、散々観たにも関わらず二十歳を過ぎてから鑑賞するたびに泣いてしまうシーンがある。

それが、「ラステルの母です」というセリフのシーンだ。これはラステルの母が囚われのナウシカに対して「ラステルの母です」と言うシーンである。何度も観ているので、当然彼女がラステルの母である事は知っているし、そのラステルの母が「ラステルの母です」と言う事も知っている。でもラステルを看取った少女を助けにきたラステルの母に「ラステルの母です」と言われる事で、ナウシカも当時の悲しみを思い出すし、ラステルの母も本当はトルメキアに対してラステルを拐われた憎しみを持っているにも関わらず、風の谷を救うためにラステルを看取ったナウシカを逃がそうとしてくれるという事や、ラステルの母はラステルの死に際してナウシカがラステルの手枷を解いてラステルを自由にした事を知らないとは思うが、ナウシカとしてはラステルの最期だし伝えてあげたいと思うが時間が無いという葛藤がありながらもラステルの母に抱きしめてもらう…とまぁ、色々と理由付けは可能だが、そんなのはどうでもよくて、とにかく必ず泣けるラステルの母のシーンとして僕の中にラステルの母が君臨する事となった名ラステルシーンだ。ラステルラステルラステル。

上述したように、大人になってから観る事で改めて泣けるシーンが増える素晴らしい作品。しかし今回劇場で鑑賞した際に、遂にナウシカがテトに指を噛ませて仲良しになるシーンで泣いてしまった(最序盤)。なんとか理由付けするなら、ナウシカの母性にも等しい優しさと表情、そして自然への愛が伝わったことによるものだと言っておこう。納得できない人は、ただの思い出補正だと考えてくれて良いです。アスベルが後ろから殴られて失神するシーンも、「アスベルが倒れたらナウシカも捕まって風の谷が…どうなるんだぁ~!?」というように、もはや記憶喪失かトム・ブラウンなんじゃないかってぐらい動揺して泣いてしまった。

メーヴェのスピード感や各シーンの美しさ、緊張感は家で観ている時より遥かに伝わってくる。また大音量で聞ける島本須美さんの脅威の演技力も度し難い。ジルが殺害された際の殺戮シーンは、アニメ史でトップレベルで"憤怒"が伝わってくる。小さい王蟲を抑えて、ケガした足が水に触れた際の悲鳴も凄まじいので、是非これを機に着目して聞いてほしい。

このアニメ映画は腐海の、そして世界の真実について触れられる事は無い。トルメキアの今後や美しきクシャナ殿下の活躍、そしてナウシカの下す判断、などなど素晴らしい物語がまだまだ続いている。原作漫画を読むと違う視点でも本作を楽しめるようになるのでオススメしたいが、全く読んでいなくても尋常ではない面白さなのが本当に凄い。劇場で観れる内に、是非足を運んでおくべきである。
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