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Aurora(原題)のCHEBUNBUNのレビュー・感想・評価

Aurora(原題)(2010年製作の映画)
4.0
【ショットガンを持つとき感情のノイズが整うんだ】
『シエラネバダ』や『荘園の貴族たち』は社会の縮図として家や屋敷が使われていた。一方で『Aurora』は自他の境界線として家の空間が効果的に使われている。離婚した男は感情の行き場を失う。部屋でイライラを紛らわせるためかショットガンを組み立てる。時に、自殺を試みようとするが死ねない。外は淀んだ空気が流れており気分を害する。やがて、ショットガンいじりは殺意へとベクトルが向いていき、離婚調停の関係者を殺害していく。

1時間付近と2時間付近に大きな殺害のシーンがあり、その前段階を男の運動を軸に描いていく。ある種、『ジャンヌ・ディエルマン』に近い手法で殺害までのプロセスが描かれていく。男はショットガンを持つと、目や動きにノイズがなくなる。殺意というベクトルに向かって感情が整うからだ。一方で、その殺意を誰かに知られてしまうのではといった恐怖に怯えている。カメラは隠し撮りのような角度で男を捉えることにより、彼の不安を煽る。また風呂場の穴や部屋の受話器などといった舞台装置を活用することにより心理を掘り下げていく。犯罪心理学の教材としても有効な一本であろう。
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