ピュンピュン丸

家族のピュンピュン丸のレビュー・感想・評価

家族(1970年製作の映画)
3.8
『男はつらいよ』寅さんでお馴染みのキャストで、別の映画を作ってみました…という印象でどうしても観てしまう。

駅の雑踏のなかですれ違うハナ肇たちは別だけど…。

初代おいちゃんが、ちょっといい加減そうな宿屋の店主をやっていて、仕事片手間に『寅さん』観て、笑っている。(^^)

倍賞千恵子(寅さんのさくら)の旦那役が、主演の井川比佐志さん。寅さんでは旦那役の前田吟さんも出演しているが、本作では旦那の弟役なので、関係の近いところで入れ替わったりしているのが逆に見ていて楽しい。

と言っても、映画の内容はせつない。

前田吟演じる人物とその父役笠智衆との親子のシーンが、最高にせつなく、心に重くのしかかった。現実は厳しい。別れ際の両者の表情のなかに、人生の全ての悲哀が詰まっているような気がしてならない。

仕事帰りの電車に人身事故多いしなぁ。悲

万博の映像は当時の雰囲気が知れて良かったが、この万博という要素もストーリー展開のなかでは残酷に機能する。

俺には雇われ仕事は性に合わん!

そう言って、友人の誘いに乗って、周囲の反対を押し切って、旦那は北海道での牧場仕事に人生を賭ける決意をする。

結局、家族は旦那の夢に付き合わされることになり…

夢に支払われる代償。
これは良かったのか悪かったのか。

男にとって仕事とは何なのか?
俺だって、雇われ仕事は向かん!
そう言いたいし。

エンディングに北海道の草原が広がり、倍賞千恵子と井川比佐志の満面の笑顔が画面に浮かんではいても、俺には雑踏の中、大人のエゴに付き合わされて、ふりまわされた早苗ちゃんのことが心に引っかかってしかたがない。