ハル

赦しのハルのレビュー・感想・評価

赦し(2022年製作の映画)
3.3
まず、目を奪われる強烈なポスタービジュアルから彼女が主人公かと思ってしまうよね…
そこからして本作の迷走、ミスリードが始まっている。
メインは同級生に殺害された娘の両親であるカツ(尚玄)と澄子(MEGUMI)であり、殺人を犯した彼女ではない。
なお、二人は事件後すぐに離婚しているため、澄子は新しい伴侶ナオキ(藤森慎吾)と生活をスタートさせている設定。

相互フォローの方々の評価はシビアなものばかりだったけれど…それも納得。
実質的な主人公、父親カツを演じた方のお芝居が厳しいクオリティー。
モデル崩れにその場で演技指導したかのような棒読み感。
根幹に据えた役柄がこれでは…
芝居という枠組みで括ると今年ワーストレベル。

一方で、MEGUMIは流石に上手だった。
抑揚があり、深味も色濃く入り混じった憂いを感じる佇まい。
映画、ドラマと出演作が増えており、
プロデューサーとして“BABEL LABEL”へジョインした最近の活躍も頷ける。
娘を殺された元妻というセンシティブで扱いの難しい役柄を巧みにこなす。
また、芸人を映画に起用する風潮には大反対だけど、藤森慎吾は普通にいそうな旦那さんを熱演している。
決して悪くない。
マルチな才能を発揮している彼は何をやらしてもそつなくこなすセンスがあるんだね。
MEGUMIもグラビア、バラエティタレントの出身なわけで、器用な二人の存在感は際立っていた。

そうした役者陣の出来不出来とは別に、本作最大の失敗はフォーカスする視点がぼやけている事。
裁判や未成年の犯罪に対して強く焦点を当てるのかと思いきや、何故か澄子を元旦那と現旦那が取り合う不倫劇の格好。
ナオキから「元旦那と会って何してるんだ!」と責められた澄子は「ナオキが考えていることは何もしてない!!」と逆ギレするんだけど、さっき酒飲んでSEXしてたやん…
見た方はみんな突っ込んだはず。
「私、最低だ!」と猛省した後も元旦那と寝てるし、人物描写の真意が本当によくわからない。

酒ばかり飲んでるカツの描写や違和感だらけの裁判シーン含め『外国人から見たそれっぽいアジア』なテイストと描写の数々。
証人を袋叩きにする検察や弁護士の態度も不自然だし、被害者の遺族と殺人犯がアクリル板無しで面会なんてありえな過ぎるのでは?
リアリティを追求することで説得感を生み出す題材、空想を練り上げ描写したような構成は悔やまれる。
裁判然り、法律然り、もう少し日本の在り方をちゃんと取材した上で作品づくりをしてくれていたらまた違ったのかな…
“これではない感”に包まれながらのエンドロール。
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