ShinMakita

デリンジャーのShinMakitaのレビュー・感想・評価

デリンジャー(1973年製作の映画)
2.9
☆mixi過去レビュー転載計画(ノンジャンル編)
…ここ10年で購入したDVD.Blu-rayのレビューです。



〈story〉
1933年。ジョン・デリンジャーは仲間のホーマー、ハリー、エディ、マックレーらと組んで、インディアナ州の銀行をスマートに襲撃して回っていた。発足したばかりのFBIは、そんな<デリンジャー一家>に注目してはいたが、州にまたがり連邦犯罪を犯し続けるギャングたちの一掃が最優先課題であったため、彼らの逮捕には手が回らずにいた。ミッドウエスト支局のメルヴィン・パーヴィス捜査官は、いつかはデリンジャーを逮捕してやると心に決めながら、今日も凶悪犯逮捕に向かう。彼が仕留めるのは、ミズーリのギャング・アンダーヒル、メンフィスに潜む<マシンガン>ケリーたちだ。

いっぽうデリンジャーたちは、調子にのって銀行やバーを襲いまくる。とある現場で、原住民とフランス人のハーフである美女ビリーを見初めたデリンジャーは、強盗の最中に彼女を手込めにし、仲間にしてしまう。しばらくは大所帯で楽しい日々が続くが、イーストシカゴで「ファーストナショナル銀行」を襲ったデリンジャーたちは、現地警察と大銃撃戦を展開し、エディとマックレーを失ってしまった。しかもこの時、デリンジャーは初めてヒトを射殺してしまう。こうして彼らは、FBIの追跡リストのトップに躍り出てしまうのだった。一家はその後、ツーソンに逃亡。そこで油断したデリンジャーは、保安官に逮捕されてしまった。レイク群刑務所に送られた彼は、ニセモノの銃でまんまと脱獄。一緒に逃走した囚人リードを連れて、ホーマーらと合流する。ホーマーは、死んだ仲間たちの穴埋めで<プリティボーイ>フロイド、<ベビーフェイス>ネルソンの二人をチームに引き入れていた。こうしてパワーアップした新生<デリンジャー一家>は、再び大暴れを開始する。

しかし1934年インディアナ州。銀行襲撃時、またもや大銃撃戦をやらかしてしまい、逃亡した先のアジトもFBIに包囲されてしまう。絶体絶命のなか、一家の面々は散り散りに包囲網を突破しようとするのだが・・・


➖➖➖
ジョン・ミリアスの「デリンジャー」。同じハナシなのに、どうしてこうも「パブリック・エネミーズ」と違うのか。それは、<渋い>と<カッコいい>の違いかも知れません。

「デリンジャー」の良さは、デリンジャーを演じるオーツの渋さもさることながら、脇が魅力的なところですよね。一家の主要メンバー、ホーマーを演じるスタントンの皮肉に満ちたキャラ。死に様までドラマティックでした。妻持ちのハリーを演じたジェフリー・ルイスのユーモラスなキャラ。そしてネルソン=リチャード・ドレイファスの憎たらしさ!彼らがいるから、デリンジャーが際立つんですよ。ぶっちゃけ、ビリーとのロマンスはどうでもよろしいの(苦笑)。対する「パブリック・エネミーズ」、確かにマイケル・マンのナイト・バイオレンス・シーンは迫力あったけど、結局は主演3人の「美しさ」が際立つ映画だったでしょう。ゼンゼン別モノなんですよね。「デリンジャー」にイケメンはただの一人も出てきませんから!!

もう一点、「デリンジャー」の魅力として、バイオレンスバリバリに見えて結構社会派な一面を描いている、というのも挙げられます。脱獄後、刑務所長と運転手を人質にとりながらタタキを働くデリンジャー。その分け前を渡そうとする場面と、去って行く場面の所長たちの情けなさ。このシーンだけで、大恐慌時代のツラサが表現されていて、巧いですね。

もっとも印象的なのは、デリンジャーが唯一の<屈辱>を味わうシーン。シカゴの高級レストランですね。たまたま同じ店にいたパーヴィスからシャンパンを奢られ「見逃す」のメモを受け取ったとき・・・FBIの余裕の態度に、彼はそうとう頭に来たでしょうね。銃で撃たれるよりも、プライドを傷つけられるほうがよっぽど応えたんだなあ、と判ります。直後の空のテーブルを映したカットでね。
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