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暗黒街の顔役のmitakosamaのレビュー・感想・評価

暗黒街の顔役(1959年製作の映画)
3.0
初見は20年以上前の浅草東宝のオールナイト。岡本喜八は大好きだが、正直言って今作にはあまりノレなかったんだよな。
で、先日スカパーにて再見。当時の記憶が蘇ったが、やはりそこまで堪能は出来なかったかしら。

やっぱり個人的に鶴田浩二がハマらないんだと思う。特に今作はヤサオトコっぷりが、見ていて焦れったさが先にくる。

とは言え流石は岡本喜八。テンポの良さに豪華キャスト人の大胆起用といい、見応えもある。
それに東映・大映が任侠ヤクザ路線をひた走る中、東宝はあくまでギャング映画を目指しているんだよね。60〜70年代のヤクザ映画ブームとは一線を画して、東宝には洗練された様式美があるんだよね。

殺人事件があり、事件発覚を警戒するギャング
重要参考人である男(宝田明)はギャングを辞めたく音楽活動に躍起になる。
ギャングの幹部クラスの兄(鶴田)は弟に音楽を自粛させ潜伏する様に交渉するが、弟は拒否。
ギャングは弟や、正体を知った無関係の娘の命を狙う。

弟とギャングとの間で揺れる鶴田だが、中間管理職的な悲哀は感じるがギャング的な貫祿が無いのが惜しい。喧嘩のアクションとかもイマイチハマらない。兄貴分の平田昭彦の方が感じでるよ。

しかし宝田明と鶴田浩二との実の兄弟の関係は良いなぁ。顔が似ている訳じゃないのに血の繋がった関係に見える。

更に三船敏郎がギャングにたかられる自動車修理工を演じる。いつも通りの威丈高な演技には変わりないが、悔しがりながらヤクザの言いなりになる三船の姿は他に無いキャラクターで新鮮だ。
三船が妖しい動きをしようとすると、ギャングのお目付役の従業員がトンカチでガンガン叩きだすという演出もサブリミナル的で面白い。三船演じる修理工の焦燥感を上手く表現してるね。

鶴田にもお目付役に佐藤允。ニヒルで感情を表には出さないが人間味があり面白いキャラクター。
やっぱり岡本喜八は佐藤允が好きなんだろうなぁ。絶対にステレオタイプな演技の鶴田や三船より、佐藤允の役幅の広さを買ってると思う。

足の悪い実子を人質に取られたり、良い仲のボスの娘(草笛光子)が救出してくれたりして、最終的にボス一味と戦う。今までの鬱憤が晴れる瞬間だね。
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